![](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9421-1.jpg)
シュールストレミングの作り方と美味しい食べ方
シュールストレミングの安全な開け方と美味しい食べ方 第15回世界料理研究会(前編) の続き
【前回の内容】
世界一臭いと言われるシュールストレミングがどんな食べ物で、どんな匂いなのか、そして、安全に開封できる方法を紹介しました。
また、美味しい食べ方を模索しましたが、あまり美味しく食べることはできませんでした。
ざっとこんな内容でした。
これではシュールストレミングの凄さは伝わったかも知れませんが、研究としてはまだまだ消化不良の感が否めません。
今回は、さらにもう一歩踏み込んで、シュールストレミングの手作りから挑戦し、本場スウェーデンのシュールストレミングを愛する人たちと同じ食べ方で、美味しくいただこうと思います。
【目次】
1.シュールストレミングの原材料
2.シュールストレミングはどのように生まれたか?
3.シュールストレミングを発酵させる微生物
4.ニシンの入手
5.ニシンの旬は春
6.イワシで代用
7.シュールストレミングを仕込む
8.1ヶ月発酵させました
9.発酵2ヶ月を超えました
10.自家製シュールストレミングを試食
11.トゥンブロードという薄いパンで巻いて食べると美味しい
12.シュールストレミングを美味しくいただくレシピ
13.実際にシュールストレミングを美味しくいただく
14.家族の反応
15.まとめ
シュールストレミングの原材料
シュールストレミングの原材料は、ニシンと海水です。
たったそれだけの原材料でできます。
ストレミングという言葉は、バルト海産のニシンという意味です。
日本で手作りする場合は、バルト海産の新鮮なニシンは手に入らないので、オホーツク海のニシンで作る事になります。
オホーツク海産のニシンを使う時点で、厳密にシュールストレミングとは言えなくなりますが、そこまで厳密な定義をクリアする必要はないでしょう。
ちなみに、シュールは、酸っぱいという意味です。
直訳すると、「酸っぱいバルト海産のニシン」という意味です。
もし、私が命名できるなら「臭いバルト海産のニシン」にしますけどね。
シュールストレミングはどのように生まれたか?
シュールストレミング発祥の北欧では、塩がたいへん貴重でした。
塩は、海水から水分を取り除けば出来ます。
北欧には海があるので、海水はいくらでもあるのですが、海水から水分を取り除くための強い日差しがなく、薪などの燃料が貴重なため煮沸させる事もできず、塩が貴重品だったのです。
そのため、低い塩分濃度でニシンを漬け込んだ結果、ものすごく芳しい発酵臭を醸し出し、なんとそれが好まれて、繰り返し作られ、伝統食となったという事です。
日本のくさやの発祥と似てますね。
くさやの場合は、昔の伊豆諸島では塩を年貢として収めていたために塩が貴重で、そのために、塩を節約するために魚を漬ける塩水を使いまわしていたら、それが発酵してくさやになったのです。
くさやについて詳しくは以下をご覧ください。
シュールストレミングとくさやの発祥には、塩が貴重だったという共通点がありますね。
塩分濃度が低ければ、微生物が活動しやすいですから、発酵食品としての可能性が大きくなるのでしょう。
ただし、塩分濃度が低ければ腐敗のリスクも高くなりますから、微妙なところです。
海水の塩分濃度が約3.5%ですから、このあたりが腐敗と発酵のぎりぎりのラインなのではないでしょうか?
シュールストレミングを発酵させる微生物
ウィキペディアによるとシュールストレミングを発酵させるのは、ハロアナエロビウム (Haloanaerobium) と呼ばれる嫌気性細菌の一種であるとの事。
![開封したシュールストレミング](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8920-1024x818.jpg)
これは、前回紹介したシュールストレミングです。
![シュールストレミングの汁](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8979-001.jpg)
このシュールストレミング缶の汁を残しておいたのです。
この汁の中にはハロアナエロビウムが生きています。
ハロアナエロビウムという呼び方ではイメージが沸かないので、今後はシュールストレミング菌と呼ぶ事にします。
このシュールストレミング菌が生きた汁と、ニシンと、海水があればシュールストレミングを手作りできるはずです。
しかし、この汁も臭いです。
ジップロックで密閉して、それを密閉瓶に入れて、それをビニール袋に入れて冷蔵庫で保管しましたが、冷蔵庫を開ける度に異臭が放たれるのです。
これは直ちにシュールストレミングを仕込んで、どこかに封印しなければ臭くてやってられません。
ニシンの入手
すぐにニシンを入手したいところですが、シュールストレミングを作るには新鮮な生のニシンが必要です。
私の住む京都では、ニシンは馴染みの食材です。
蕎麦にニシンの寒露煮を入れた、にしん蕎麦は有名だと思います。
京都では、ニシンの寒露煮なんて、いつでもどこでも売ってますが、生のニシンは、あまり馴染みがありません。
まれにスーパーで売ってるのを見る程度です。
また、身欠きニシンというニシンの干物はよく売ってます。
身欠きニシンで甘露煮を作るから売っているのでしょう。
要するに、京都では、生のニシンはあまり手に入らない貴重品なのです。
しかし、今はネット通販があり、送料さえ払えば世界中の食材を家まで届けてもらえる時代ですよ。
ニシンの旬は春
ネット通販で調べたのは10月下旬でした。
楽天の オホーツクの風〜海老蟹いくら専科 というショップでは
![生ニシンは在庫なし](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/nishin01-1.jpg)
この時期は、生ニシンは売ってません。
丸干しニシンしか売ってませんでした。
新鮮な北海道産の生ニシンを冷凍で送ってもらうには、春でなければいけないみたいです。
イワシで代用
![イワシ](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8981.jpg)
そんな訳で近くのスーパーでイワシを買ってきました。
ニシンが手に入る春までシュールストレミング菌が生きた臭い汁を保管したくないですから、すぐに仕込みたいのです。
イワシはニシンの仲間なんですよ。
イワシは、ニシン目ニシン科の魚なのです。
だから、きっと似たようなものが出来ると思います。
シュールストレミングを仕込む
![イワシを開く](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8982.jpg)
まず、イワシを開きます。
このまま漬け込もうかとも思いましたが、尻尾の部分は食べないので、取り除く事にします。
![イワシの身だけにする](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8983.jpg)
このように、骨を取り除き、身だけにしました。
こうすると、完成品が食べやすくなるからです。
本物のシュールストレミングを食べた時、口の中に骨が残り、それが気になったからです。
魚の背骨も発酵に関わっているみたいなので、シュールストレミングの汁が無い場合は、背骨ごと漬け込む必要があります。
その場合でも、頭と内臓は取り除かないといけませんよ。
![イワシを密閉瓶に入れる](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8984.jpg)
100均で買ってきた密閉瓶に処理したイワシを入れ、シュールストレミングの汁を入れ、海水をひたひたになるまで入れます。
海水は夏に海水浴に行ったときにペットボトルに入れて持ち帰ったものです。
きれいな海水は、絶対に腐らないので、我が家では料理研究のために海水を保存してあるのです。
海水が無い場合は、約3.5%の塩水を使うといいでしょう。
そして、瓶を密閉します。
シュールストレミング菌による発酵が進むとガスが発生するので、密閉瓶だと内圧が高まり瓶が破裂する恐れがあります。
その点、100均の密閉瓶は、作りが雑なのか微妙にガスの抜け道があるようなので、シュールストレミングを密閉するにはちょうど都合が良いです。
![シュールストレミングを庭で発酵させる](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_8990.jpg)
これを庭に置いて発酵させます。
これはシュールストレミングの汁を使っているために、最初から臭いです。
匂いが拡散しないように、ビニール袋に入れておきます。
1ヶ月発酵させました
![1ヶ月発酵させた自家製シュールストレミング](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9404.jpg)
発酵が進んで、ガスが発生してます。
臭いも順調で、袋の上から臭いを嗅いでも十分に堪能する事ができます。
庭が臭くて困るという事はありません。
けど、風向きによっては微かに臭うような気がします。
スウェーデンでは5月頃にシュールストレミングを仕込み、涼しい場所で8月中旬まで発酵させます。
日本の5月から8月といえば暑いですが、スウェーデンでその季節の涼しい場所というのは、17~18℃くらいのようです。
京都ではどうでしょうか。
これを仕込んだのは2019年10月30日です。
11月の京都の平均的な気温は、およそ最高17℃、最低7℃です。
いや、2019年はもっと暖かかったです。最高気温が20℃を超える日が何日もありました。
同じく12月の京都の平均的な気温は、最高11℃、最低2℃ですが、2019年はもっと暖かかったです。
まあ、とにかく、11~12月の京都は、シュールストレミングを発酵させるには都合の良い温度でした。
発酵2ヶ月を超えました
![2ヶ月以上発酵させた自家製シュールストレミング](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9412.jpg)
2020年1月4日です。
見た目にも、十分に発酵が進んでいます。
イワシが分解されて溶けかかっています。
臭いも袋の上から十分に堪能できますし、もう完成してるでしょう。
庭全体も少し臭いですが、この季節は窓を閉めて、庭に出る事ありませんから生活に支障が出ることはありませんでした。
完成してるのは、分かってるのですよ。
12月中旬の時点で、もう十分に完成してる感じでした。
だから、完成してるのは分かってるのです。
けど、
食べたくないなぁ。
だって食べ物の匂いじゃありませんよ。
庭にボットン便所を設置したような臭いですよ。
いったい、
誰がこんな物作ったんじゃ!!
はい、私です。
自家製シュールストレミングを試食
![自家製シュールストレミングの瓶詰](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9413.jpg)
袋から取り出しました。
なんと形容して良いのやら、画像では見た目しかお伝えできませんが、見た目よりも臭いの方が強烈なインパクトがありますよ。
![シュールストレミングを入れていた袋。これだけで臭い!](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9414.jpg)
密閉瓶を入れていた袋です。
この袋の臭いを嗅ぐだけで泣く子も黙る事でしょう。
これだけで、破壊力抜群ですよ。
![自家製シュールストレミングの瓶を上から見る](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9415.jpg)
では、瓶を開けてみましょう。
ただいまより瓶開けの儀を行います。
![自家製シュールストレミング瓶の蓋を開ける](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9416.jpg)
開けました。
本当に、画像では見た目しかお伝えできないのが残念ですよ。
お伝えしたいことはもっと他にあるのです。
とにかく臭いという事です。
![自家製シュールストレミングを一切れ取り出す](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9417.jpg)
一切れ取り出してみます。
イワシがかなり分解されて、身が崩れかかっています。
汁は、少しドロリと粘りがあります。
何度も繰り返しますが、臭いです。
![自家製シュールストレミングを細かく切る](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9433.jpg)
では試食してみましょう。
![自家製シュールストレミングを試食](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9434.jpg)
ほんの少し、小さなかけらを食べてみます。
パクッ!
うっ…
うわ~!!
こりゃたまらん。
発酵が進んでいるためか、以前食べた本物のシュールストレミングよりも臭いが強烈で、パンチ力も抜群です。
塩漬けにした魚が発酵して旨味が激増しているという味と強烈な臭いです。
ですが、この味、この香り、まさしくシュールストレミングです!
やったー!!
大成功だ!!
私は、口に残ったシュールストレミングの残骸から汲み取り式トイレのような臭い発散させながら、とうとうシュールストレミングまで手作り出来たと、身体が震えんばかりの喜びと感動を覚えました。
トゥンブロードという薄いパンで巻いて食べると美味しい
それでは、本場スウェーデン式の美味しい食べ方でいただきましょう。
スウェーデンでは、トゥンブロードという薄いパンでジャガイモ・赤たまねぎ、シュールストレミングを巻いて食べます。
お好みでディルなどのハーブとチーズなども入れると良いです。
トゥンブロードという薄いパンは、日本では小麦粉で作るフラワートルティーヤで代用するといいでしょう。
フラワートルティーヤは手作りする事もできます。
![フラワートルティーヤを作る](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9405.jpg)
【フラワートルティーヤの材料】4枚分
薄力粉 100g
オリーブオイル 5g
塩 2g
水 55g
全ての材料を混ぜ、こねて、しばらく休ませてから4等分して打ち粉をして伸ばし、フライパンで焼きます。
![フラワートルティーヤ](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9431.jpg)
4枚焼きました。
シュールストレミングを美味しくいただくレシピ
【材料】
トゥンブロードかフラワートルティーヤ(買ってくるか手作りする)
シュールストレミング(買ってくるか手作りする)
ジャガイモ(茹でて細かく切っておく)
赤たまねぎ(スライスして水にさらしておく)
チーズ(クリームチーズを使いました)
ディル(売ってなかったので家にあった乾燥タイムを使いました)
コショウ
マヨネーズ(お好みで)
塩は、シュールストレミングの塩味があるので不要です。
![フラワートルティーヤにシュールストレミングなどをトッピングする](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9421.jpg)
フラワートルティーヤに全ての材料をばらまきました。
![シュールストレミングを巻いたトルティーヤ](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9423-001.jpg)
丸めました。
こうすると食べやすいですね。
美味しそうに見えませんか?
ちなみに、これは庭でやっています。
寒いですが、室内でやると臭いですから、寒い方がまだマシです。
実際にシュールストレミングを美味しくいただく
![シュールストレミングを巻いたトルティーヤをいただく](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9424.jpg)
では、いただきます。
![シュールストレミングを巻いたトルティーヤを一口かじったところ](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9425.jpg)
ガブリ!!
モグモグ…
ん?
うわ、来た!!
口の中に入れてモグモグしたら突然口の中で味が爆発しました。
シュールストレミングが良いアクセントになってますよ。
非常に強烈なアクセントですが、これは美味しいです。
いや、美味しいと言えば語弊があるかな?
けど、間違いなく、この食べ方はシュールストレミングの良い食べ方です。
![シュールストレミングを巻いたトルティーヤを2口食べたところ](https://otokonakamura.com/wp-content/uploads/CSC_9426.jpg)
もう一口食べました。
チーズやジャガイモやトルティーヤの存在がシュールストレミングの刺激を包み込んでくれます。
また、赤たまねぎやハーブの存在がそれらと調和します。
刺激を包み込んで調和させた状態で、旨みとして口の中で昇華するのです。
とうとう私は、シュールストレミングの味を理解できる境地に達しました。
好きか?といわれると、好きではありませんが、理解できたつもりです。
この味を、独り占めにするのはもったいない。
妻にも味わってもらわなければ。
家族の反応
妻は、一口食べただけで、ヒーヒー言いながら笑いながら涙を流しておりました。
数時間後に、再び味を思い出して笑っておりました。
ちょっと精神に異常をきたしたかも知れません。
12歳の息子は、瓶から直接匂いを嗅いだだけで、ゲホッとむせて、それだけで食べませんでした。
10歳の娘は、部屋に漂う匂いだけで十分臭かったみたいで、それ以上の興味を示すことはありませんでした。
シュールストレミングを巻いたトルティーヤの残りは、私が美味しく完食しました。
トルティーヤが3枚残ったので、残りはハムとチーズなどを巻いて、ブリートを作りました。
これはものすごく好評でした。
最初から分かっている事ですが、美味しい食べ方でいただいても万人に受ける訳ではありませんね。
まとめ
- シュールストレミングの原材料は、ニシンと海水のみ。
- 北欧では、塩がたいへん貴重で、低い塩分濃度でニシンを漬け込んだ結果、ものすごく芳しい発酵臭を醸し出し、なんとそれが好まれ、繰り返し作られ、伝統食となった。
- シュールストレミングを発酵させるのは、ハロアナエロビウム (Haloanaerobium) と呼ばれる嫌気性細菌の一種。
- ニシンの旬は春、新鮮な生ニシンが手に入らない場合はイワシで代用可。
- 100均の密閉瓶にイワシ、シュールストレミングの汁、海水をひたひたになるまで入れて発酵させると2ヶ月で完成した。
- 自家製シュールストレミングは少し発酵が進み強烈な臭気だが大成功。
- スウェーデン式の美味しい食べ方でいただくと本当に美味しい。
その後、シュールストレミングについていろいろ調べましたが、イワシを背骨ごと海水に漬け込むとシュールストレミングの汁が無くても作る事ができそうです。
日本の各家庭でもスーパーに売っている食材でシュールストレミングを手作りできるレシピを開発するという新たなる目標が出来てしまいました。
そんなレシピいらんやろ。