イワシのなれずしを作る
イワシと塩とご飯を真夏のベランダに1ヶ月放置して作る
滋賀県の名物で鮒寿司という発酵食品があります。
鮒寿司は、琵琶湖のニゴロブナと塩とご飯を真夏の熱い時期に漬け込んで熟成発酵させて作ります。
発酵食品が大好きな私も鮒寿司を作ってみたいと思いましたが、ニゴロブナが入手困難なので、代わりにどこでも売っているイワシで作る事にしました。
動画もあります。
動画は、オトコ中村自らが語り、視覚的に分かりやすいので併せてご覧ください。
けど動画は、長ったらしくならないように細かい説明を省略してます。
ブログでは、そういった細かい部分まで整理して書いています。
【目次】
1.まずは鮒寿司を知る
2.イワシのなれずしの材料
3.イワシのなれずしを作る手順
4.イワシを塩漬けにする
5.ご飯と一緒に漬け込む(本漬け)
6.真夏のベランダに1ヶ月放置
7.1ヶ月後(完成)
8.イワシのなれずしを試食
9.イワシのなれずしカナッペ
10.トマト&チーズ&イワシのなれずし
11.なれずしは冷凍保存できます
12.まとめ
13.イワシの発酵食品についての関連記事
まずは鮒寿司を知る
鮒寿司は、冒頭にも説明した通り、ニゴロブナと塩とご飯を真夏の熱い時期に漬け込んで熟成発酵させて作ります。
勉強のために買ってきました。
135g入りで1296円(税込)でした。
内容量135gのうち、半分くらいはご飯ですから、1296円という値段は、ニゴロブナ70gくらいの値段という事でしょう。
そりゃもう高いですね。
これは、養殖のニゴロブナを使っているのですが、天然のニゴロブナを使ったものは、倍くらいの値段してました。
画像の右側の4切れは、子持ちのニゴロブナで、左側の3切れは雄のニゴロブナの内臓をくり抜いて、中にご飯が入っているものです。
子持ちの方が高価です。
味は、塩味と、乳酸発酵の酸味と、発酵による旨味と香り(臭み?)が渾然一体となって、口の中から鼻に抜けていき、強い余韻が残ります。
強烈な味です。
鮒の身は、しっかりとした噛みごたえがありますが、骨は発酵により柔らかくなっています。
ご飯は、米麹のようにも見えますが、米麹とは全く違います。
乳酸発酵したご飯です。
ご飯も基本的に鮒と同じ味です。
少しとろけたけど芯があり、酸っぱくて塩辛いご飯です。
魚を塩とご飯と一緒に漬けると、そこまで強い塩分濃度ではないのに、なぜか腐らずに保存が効くのですね。
こうやって、魚を腐らせずに保存した発酵食文化に敬意を感じます。
それでは、これを参考にイワシでなれずしを作ってみます。
イワシのなれずしの材料
【イワシのなれずしの材料】今回作った量
真イワシ 10尾くらい
塩 200g くらい
ご飯 1合くらい
分量はアバウトでいいです。
イワシのなれずしを作る手順
【イワシのなれずしを作る手順】
イワシを塩漬けにする (1週間以上)
ご飯と一緒に漬け込む (1ヶ月くらい)
この手順は鮒寿司の作り方に倣いました。
鮒寿司は、5月頃に獲れるニゴロブナを塩漬けにし、梅雨があけた頃に塩を洗い流し、ご飯と一緒に漬け込みます。
夏の熱い時期に漬け込んで乳酸発酵させる事がポイントです。
数ヶ月熟成させ、翌年の正月に食べ始めたりします。
中には2年以上熟成させたものもあります。
昔は、食料が不足する冬に食べるための保存食という意味もあったのではないでしょうか。
だから正月まで熟成させたのだと思います。
手作りするにあたって、最も大切なのは、真夏の熱い時期に乳酸発酵させる事です。
現代は、冬でもスーパーに行けば食料は売ってますから、冬まで保存しておかなくても、とりあえず、真夏に1ヶ月以上熟成させれば、十分に乳酸発酵できているだろうと思い、1ヶ月で完成という事にします。
イワシを塩漬けにする
スーパーで買ってきたイワシを開いて塩漬けにします。
画像は、開いたばかりの状態です。
これを何か適当な容器に、イワシと塩を交互に積み重ね、最後にイワシの姿が見えなくなるまで塩を入れ、冷蔵庫に置いておきます。
塩の量が十分にあれば、冷蔵庫でなくても大丈夫です。
鮒寿司に倣って5月にイワシを塩漬けにしましたが、イワシなら1年中手に入るので、5月でなくてもいいです。
塩漬け期間は1週間もあれば十分だと思うので、本漬けする1週間前くらいから塩漬けを始めてもいいと思います。
そして、これを鮒寿司に倣って、梅雨が明けた頃に本漬けします。
ご飯と一緒に漬け込む(本漬け)
2020年、近畿地方の梅雨が開けたのが、7月31日でした。
5月28日に漬け始めたので、塩漬け期間はおよそ2ヶ月でした。
2ヶ月経ったイワシは、塩が完全に溶け、少し茶色くなっています。
イワシを水洗いし、キッチンペーパーで水分を拭き取ります。
適当な容器に、炊いてから冷ましたご飯を薄く敷き詰めます。
その上に、イワシ→ご飯→イワシ→ご飯と、敷き詰めていきます。
ご飯の上に葉蘭の葉を置きました。
葉蘭は何となく清潔感があり、我が家の庭に生えていて使い放題なので使っただけです。
なければ使う必要はありません。
その上にラップを被せて重石を乗せます。
何か適当な袋に入れて、ベランダに放置します。
袋に入れるのは、虫の発生を防ぐためと、匂いの発散を防ぐためです。
真夏のベランダに1ヶ月放置
真夏のベランダに放置してたのですが、そりゃもう暑かったですよ。
特にお盆前後の暑さはえげつない暑さでしたわ。
こんな気温なら、カレーの残りを常温で一晩置いておくだけで腐りますよね。
そんな気温の中で1ヶ月間放置したのですから、イワシはどのように変化するのでしょうね。
過去にサバのなれずしを作った事があります。
その時は、6月に1週間熟成させました。
6月に1週間熟成させたなれずしは、程よく発酵による酸味が出て、ご飯は現代の酢飯と大差ありませんでした。
今回は、8月に1ヶ月ですから、発酵度合いは比べ物にならないでしょう。
1ヶ月後(完成)
恐る恐る袋を開けてみます。
お!?
ご飯が茶色くなっています。
カビは生えていないようです。
カビが生えると台無しですから、カビが生えていないという事で、ひとまず安心です。
まずは、重石を取り除きます。
重石を取り除くと、少し変色した葉蘭の葉が確認できます。
そして、全くカビが生えていない事もわかりました。
カビが生えていないという事は、腐敗でなく、ちゃんと発酵したのでしょう。
少しくらいカビが生えていても、それを取り除いて食べる覚悟でいましたが、カビが生えていない事で安心しました。
ラップを剥がします。
すると、イワシの発酵した匂いがしてきました。
今まで、いろんな匂いのする発酵食品を作ってきましたが、それほど強烈な匂いではありません。
けど、外から部屋に入ると、「何!?」と驚く程度の匂いです。
ご近所への迷惑にならないか気にするほどではありません。
葉蘭を取り除きます。
このように、葉蘭に隠れていた部分のご飯はそれほど変色していません。
そして生臭い発酵臭がします。
大きなお皿にそのままひっくり返そうと思いました。
けど、容器に密着していてひっくり返す事ができませんでした。
重石でプレスしていたのですから、密着していて当然です。
包丁で切り目を入れて取り出します。
包丁を入れて分かりましたが、イワシは包丁でなくても切れるくらいに柔らかくなっています。
ケーキを切った時に生クリームがナイフに付くように、なれずしがナイフに付きました。
そのくらいクリーミーで柔らかいという事です。
ケーキのように取り出します。
イワシのなれずしを試食
イワシのなれずしです。
柔らかく、口の中でアンチョビのような発酵味と塩辛さがクリームのように溶けていきます。
鮒寿司のような酸味はなく、酸味はマイルドです。
思ったよりも食べやすいです。
そして、普通に美味しいです。
白ワインと一緒にいただきましたが、白ワインと相性抜群でした。
白ワインは、魚介類と相性が良いと言いますが、なれずしも魚介類ですから、例外ではありません。
鮒を発酵させるより、イワシを発酵させる方が臭いイメージがありましたが、そんな事はありませんでした。
イワシのなれずしカナッペ
クラッカーにクリームチーズとなれずしを乗せるだけです。
味はどこにでもありそうな、普通のカナッペです。
美味しいです。
私は、そのように感じたのですが、家族の反応はこうでした。
【11歳の娘】
強烈な味だけど食べられないことはない。
【妻】
強烈だから、乗せているなれずしの量を減らして欲しい。そしたら食べられる。
【13歳の息子】
魚嫌いだから、イワシのような青魚は特に嫌い。
ましてや、イワシを発酵させた料理なんて!
見向きもしませんでした。
私は、今まで色々と発酵食品を作って食べたきたので、知らぬ間に、発酵食品に関する強力な免疫が身に備わっていたのでしょう。
私の感覚で説明しても、普通の人には正しく伝わらないかも知れませんね。
だから、私は普通に美味しいと説明しましたが、読者の皆様は、家族の反応を参考にしてください。
トマト&チーズ&イワシのなれずし
トマトの輪切りにスライスチーズ・玉ねぎ・なれずしを乗せます。
コショウを振り、オリーブオイルをかけていただきます。
普通にカプレーゼみたいで美味しかったです。
ですが、これを食べたのは私だけなので、普通の人が食べたら、少し違う反応かもしれません。
なれずしは冷凍保存できます
なれずしはラップに包んで冷凍保存できます。
こうすれば、いつでも食べたい時に解凍して食べられます。
別に冷凍しなくても、再び重石を乗せて袋に入れて常温で放置しても大丈夫です。
それが本来のなれずしの保存法かも知れません。
まとめ
- 鮒寿司はニゴロブナと塩とご飯を熟成発酵させて作る。
- ニゴロブナは入手困難なのでイワシで代用すると良い。
- イワシを塩漬けにし、次にご飯と一緒に漬け込む。
- 漬け込むのは梅雨が明けて夏本番になってから。
- 真夏なら1ヶ月程度熟成発酵させたら完成。
- 完成したなれずしはクリーミーでアンチョビのようで美味しい。
- 普通の人には強烈な味と感じるかもしれない。
- なれずしは冷凍保存できるが、冷凍せずに常温で置いておくのが本来の姿。
なれずしは、乳酸菌がたっぷりですから、美容と健康に良いです。
滋賀県では、風邪を引いた時や、お腹の調子が悪い時は鮒寿司を食べると良くなると言われています。
私も体調が悪くなったら冷凍保存したなれずしを解凍して、それを食べて回復させるようにします。
イワシの発酵食品についての関連記事
イワシの発酵食品といえば、今までいくつか作りました。
代表的な3つをご紹介したいと思います。
これら3つには共通点があります。
それは「臭い」という事です。
イワシと塩だけで漬け込んで作った魚醤について。
最後に、濾し取る時の匂いは強烈でした。
くさやを漬けるくさや液というのをイワシから作りました。
上記の魚醤の経験が活かされています。
世界一臭いと言われているシュールストレミングはニシンで作るのですが、ニシンが入手困難だったために、例のごとくイワシで代用しました。