イカと塩だけで2年半熟成させた「いしる」は予想外の味!?
能登の特産品いしるを手作りしてみます。
いしるとの出会、いしるの仕込み方、いしるを使った料理など、いろいろご紹介します。
【目次】
1.いしるとの出会い
2.いしるを使って料理を作ってみる
2-1.まずはいしるを使った代表的な料理いしる鍋
2-2.いしる大根煮
3.いしる を作る
3-1.1日経過
4.なんだかんだ言って30ヶ月経過
5.いしるの蓋オープン
6.いしるを濾過する
7.いしるを味わう
8-1.あったかご飯に固形分を乗せてみる
8-2.冷奴にかけてみる
8-3.納豆に混ぜてみる
8-4.マヨネーズと混ぜてみる
8-5.スープを作ってみる
8-6.ガパオライスの味付けに使ってみた
9.まとめ
いしるとの出会い
高速道路のサービスエリアで能登の特産品である「いしる」を売っていたので買いました。
500ml入りで500円(税別)でした。
原材料は、いか、食塩、糀とシンプル。
イカに食塩を加え、18ヶ月発酵熟成させ、加熱、ろ過し製造して作られたようです。
原材料のイカとは、主に真イカ(スルメイカ)の内臓を使っているようです。
味見してみますと、舐めた瞬間は普通の醤油っぽいのですが、後味にイカ臭がプ~ンと広がります。
イカ風味の醤油と言った感じです。
イカで作ったのだからイカ臭がして当然かもしれませんが、原材料のイカは発酵している訳ですから、もっと違う発酵したイカ臭がするものと思っていましたが、思ってたよりもマイルドなイカ臭でした。
以前イワシを塩漬けにして作った魚醤は、イワシ臭というよりは、イワシが発酵してパワーアップした強烈な臭いでした。
いしるを使って料理を作ってみる
とりあえず、いしるを使った料理を作ってみます。
まずはいしるを使った代表的な料理いしる鍋
いしるを10倍くらいに薄めて魚介類と野菜を煮込むというシンプルな料理です。
鍋に昆布少しと450mlの水を入れて火をつけます。
沸いてきたらいしる50mlを入れる。
そして、お好みの魚介類と野菜を入れたら完成。
いしる鍋。
ちょっと塩辛いので、みりんを大さじ1加えましたが、それでも塩辛いので少し水を加えて薄めました。
イカ風味の鍋です。
具にイカを入れましたが、もちろんそれの風味でだけはありません。
これを食べて気が付いたのですが、イカとネギは相性がイイです。
いしるの味が浸み込んだネギが、たまらなく美味しかったです。
また、イカとネギの味が浸み込んだ豆腐も、耐え難い美味しさでした。
いしる大根煮
いしるで煮た大根。
いしると、大さじ1のみりんで大根を煮たというシンプルな料理です。
美味しい。
イカの風味と大根もよく合います。
さて、ここまでは前置きで、これからが本番です。
いしるを作るところから始めてみましょう。
いしる を作る
いしるを作るために、イカを買ってきました。
スルメイカを買うつもりが売ってなくて、予算を大幅にオーバーしますが、ヤリイカを買いました。
今回イカを買うまで知りませんでしたが、私の住む京都ではスルメイカの旬は夏で、冬はあまり売ってないのです。
そして冬にはヤリイカや、ヤリイカの仲間である剣先イカがよく売られているのです。
冬にスルメイカがよく獲れるのは九州北部方面らしいです。
ところで、買ってきたヤリイカは岩手県産と書いてあります。
岩手から京都まで運んで来たものを買ってきたわけです。
それだったら北九州から京都までの距離の方が近いですよ。
九州からの便が、タイミングが合えば京都でも売っているのかな?
まあ、とにかく、私が買いに行った時にスルメイカは売っていませんでした。
タッパーにイカを放り込みます。
内臓だけを入れて、イカは食べるつもりだったのですが、ヤリイカの内臓があまりにも少ないので、結局ヤリイカ全体を入れました。
これなら、コスパ悪いですが、きっと澄み切った味の高級いしるになると思います。
イカの重さに対して18%の重さの塩を入れます。
約400gのイカに対して約72gの塩を入れました。
そのまま1年くらい放置しておきます。
1日経過
塩が溶けて、イカも底に沈みました。
タッパーの容量に対して中身が少ないのが気になります。
別に気にするほどの事では無いのですが、やはり気になります。
タッパーの容量満タンにするために、またイカを買ってきました。
今度は宮城県産やりいか。
今度は内臓と下足の部分のみを入れました。
イカの本体は、何か別の料理にして食べる事にします。
塩も追加しました。
米麹も少し入れました。
何故米麹を入れる必要があるのか分かりませんが、原材料に糀と書いてあったので入れてみました。
これでタッパー満タンになりました。
このまま1年くらい放置する事にします。
なんだかんだ言って30ヶ月経過
1年で完成させるつもりでしたが、これを濾過したりするのが面倒で、ずるずると放置を続け、結局2017年1月から2019年7月まで2年半(30ヶ月)熟成させました。
これがイカであるという事は、もう見た目にはわかりません。
黒いドロドロにしか見えません。
2年半の間、一度も蓋も開けず、かき混ぜず、完全に放置してました。
時間によってこのように変化したのです。
イカが完全に溶けたようなので、これで完成という事で、蓋オープンといきましょう。
いしるの蓋オープン
オープンの前に、2年半前に蓋を閉じる前の状態を見ておいてください。
イカの上に米麹を乗せたので、真っ白ですね。
それでは、2年半熟成した蓋をオープンしましょう。
オープンしました!!
プ~ン!
すごいイカ臭!
イカの干物みたいな匂いです。
白かった米麹も、今では全く違う色になりました。
でろでろ~ん、というイカの塊というか残存物とドロドロの液体が混ざり合っています。
ちょっとスプーンをなめて味見してみましょう。
え!?
なめても大丈夫!?
きっと大丈夫でしょう。
もしお腹壊したら、壊しましたと報告しますから、その時はマネしないでくださいね。
ペロッ。
ん?
お~。
イカの塩辛みたいな味です。
イカの塩辛とイカの干物の両方が混ざって、ちょっと強烈になった味です。
見た目のインパクトは大きいですが、味は許容範囲内でした。
私の許容範囲は広いですから、普通の方には参考にならないかもしれませんが…
いしるを濾過する
キッチンペーパーで濾過します。
が、
ドロドロの液体は、全くキッチンペーパーを通り越しません。
ザルで濾しました。
しかし、すごいイカ臭ですよ。
濾した塊を箸でつまんでみました。
イカの胴体だった部分でしょう。
これも、ほんの少し食べてみましたが、イカの塩辛とイカの干物を混ぜたような味でした。
濾した液体と、残った固形分に分かれました。
液体と固形分を少しずつ味見しましたが、どちらもほとんど同じ味です。
固形分の方が、イカの肉体の名残が残っていて、若干内臓のコクが強いような感じですが、主な違いは形状だけという印象です。
いしるを味わう
これで、いしるは完成なので、あとは色々な料理に使って味わってみるだけです。
生のイカを2年半も常温で熟成発酵させて、食品衛生的にはアウトなのですが、そこは発酵食品の凄いところ、大丈夫なんですね。
どんな恐ろしい味になるかと、ちょっと怖かったですが、熟成味の強いイカの味だったので、納得の味です。
さて、どのような料理に合うでしょうか。
今からいろいろ試してみましょう。
あったかご飯に固形分を乗せてみる
まずは、シンプルに固形分をあったかご飯に乗せていただきます。
美味しいです。
2年半熟成イカの塩辛という味です。
12歳の息子は、一口も食べませんでした。
10歳の娘は、これはイカの塩辛だ。と言ってました。
冷奴にかけてみる
冷奴に液体をかけてみました。
豆腐の味が分からないくらいイカの味が濃厚です。
豆腐にかけるならもっと少ない量がいいかもしれません。
納豆に混ぜてみる
納豆に混ぜてみたら、これも予想通り、イカの味全開の納豆となりました。
あまりに個性的な味で、毎日食べると飽きるかも知れませんが、たまにはこういうのがあっても良いかも知れません。
マヨネーズと混ぜてみる
いしるマヨネーズにしてみました。
マヨネーズと混ざると、まろやかになって普通に美味しいです。
スープを作ってみる
お湯にいしるを溶かしました。
出汁は取らずに、お湯にそのままいしるを溶かしただけです。
旨味が強いので、出汁を取らなくてもスープとして味が成立するのです。
それにしても、凄い匂いです。
作っている最中に息子が「何だ?この魚介類の匂いは?」と騒いでました。
溶き卵と刻みねぎを入れて、いしるスープの完成。
めちゃくちゃイカの味です!!
イカはイカでも新鮮なイカでなく、イカの塩辛のような干物のような熟成味濃厚なイカの味で、まず口に入れた途端にイカの味が爆発して、その味をグイッと飲み込んで、さらに熟成味濃厚なイカの余韻が続きます。
12歳の息子は「めっちゃイカの味。ちょっと無理。」と言って一口食べただけで残しました。
妻は、「ちょっとこういう気分ではない。」と言って一口食べただけで残しました。
10歳の娘は「大丈夫。」と言って、全て食べました。
私は、そんなに食べられないほどの味とは思ってもみなかったので、ちょっとショックでした。
これは、珍味という事にしておきましょう。
ガパオライスの味付けに使ってみた
このいしるは、あまりにイカの風味が濃厚で、パンチが強すぎるので、メインの味付けでなく、プラスアルファの味付けに使うと良いのでしょう。
ガパオライスの味付けに使ってみました。
こういうエスニック料理のような賑やかな味だと、イカのパンチ力もまぎれて、家族全員で普通に美味しくいただきました。
まとめ
- イカと塩を混ぜて2年半一度も蓋も開けず、かき混ぜず、完全に放置していしるが完成。
- いしるの味は、イカの塩辛とイカの干物の両方が混ざり、ちょっと強烈になった味。
- 完成したいしるは、イカの肉体の残存物(固形分)と、漉した液体に分けられた。
- 固形分は2年半熟成させたイカの塩辛という感じ。
- マヨネーズに混ぜるとまろやかになって美味しい。
- このいしるは、あまりにイカの風味が濃厚で、パンチが強すぎるので、メインの味付けでなく、プラスアルファの味付けに使うと良い。
この手の発酵食品は、世間一般に作り方が知れ渡っているわけでないので、仕込んでも、どのように変化するか、いつ完成するか、どんな物が出来るか予想がつかないですね。
それが面白いところなんですよ。