皆様は、「へしこ」をご存知でしょうか?
へしこというのは、魚介類のぬか漬けの事です。
魚介類なら何でも良いみたいですが、主に鯖で作られます。
画像は、福井県小浜市にある田村長というお店のサイト http://www.tamuracho.co.jp/ から拝借しました。
画像を見れば、およそどんな物なのかイメージは出来ると思います。
魚を長期発酵させているのですから、臭いもあります。
好き嫌いが分かれるでしょう。
鯖街道について
京都と福井の間には昔から、鯖街道と呼ばれるルートがあります。
昔は、福井で獲れた鯖を京都まで背負って歩いて運んでいたらしいです。
腐らないように、塩漬けにして運んでいたのですが、ちょうど、京都に付く頃に良い塩加減になっていたとの事。
そのため京都では生の鯖ではなく、鯖寿司や、ばってらの文化が発達していますね。
現在は、車があるので歩いて運ぶ必要はありませんが、いくつもの山を越えるルートは、山歩きのコースとしても、人気があるみたいです。
山歩きが大好きな私も、いつかは鯖街道を歩いてみたいと思っています。
鯖街道歩きは、ただ山歩きを楽しむだけでなく「鯖街道を歩いているのだ」ということを思い、歴史ロマンに浸りながら歩くのです。
距離が長いので、一泊二日の日程でトライするのが一般的ですが、体力に自信があれば丸一日かけて歩くことも出来るらしいです。
昔は、一晩中歩いて鯖を運んでいたので、そのことを思えば一日で歩くのも無理ではないですね。
私はどんな日程で挑むのでしょうか?
京都でのへしこについて
さて、京都では鯖寿司は人気ですが、何故か「へしこ」は馴染みがありません。
理由はよく分かりませんが、京都の文化に合わなかったのでしょう。
しかし、これは発酵食品であるからにして、私の興味はそそられますね~。
塩鯖でへしこを作る
へしこは、すでに説明しましたが、魚のぬか漬けです。
野菜のぬか漬けは、1~3日もすれば完成しますが、へしこは数ヶ月~1年以上も熟成させます。
熟成期間が長ければ長いほど、家庭で作るにあたってのハードルが高くなります。
熟成期間の長いものを手作りしようと思うと、長い熟成期間を待ってられないと思うかも知れませんが、実際に作ってみると、ただ長期間置いておくだけで、そのうち置いてあることも忘れるので、どうって事無いのですが、やはり、熟成期間が短いほうが作りやすい気がします。
なので今回は、熟成期間を短く、試作という形で作ってみようと思います。
塩鯖を買ってきました。
本当のへしこは、生鯖を1~2週間塩漬けにするのですが、試作なので塩漬け期間を省略するために、塩鯖を使用します。
タッパーにぬか既に完成しているぬか床のぬかを敷き詰めます。
本当のへしこは、新品のぬかを使い数ヶ月~1年以上熟成させますが、試作なので、完成されたぬかを使用して、熟成期間を短縮します。
塩鯖とぬかを重ねていきます。
少し塩も入れました。
ぬかは、我が家で5年以上漬けている野菜の旨みたっぷりのぬか床なのできっと美味しく漬かるはず。
ぬかで埋め尽くして、ギュッと押さえつけます。
へしこは、重石を乗せて押さえつける事を、福井の言葉で「へし込む」と言うので、そこからへしこと呼ばれるようになったそうです。
表面に塩をして、ラップで空気に触れないようにしてから蓋を閉めます。
このタッパーでは重石を入れる余地が無いので、重石無しですが、そのかわりと言っては何ですが、たまに手でへし込んでやろうかと思っています。
とりあえず1ヶ月くらい熟成させます。
そして…
1ヶ月が経過しました。
これが約1ヶ月熟成されたものです。
タッパーの蓋を開けると、プーンとぬか漬けの匂いと魚の匂いがします。
腐敗臭ではありません。
表面にラップをピチッとかぶせてあるのですが、端のラップがかぶさっていない部分は白いカビのようなものが発生しています。
ラップをはがしてみました。
特に変化はありません。
表面のぬかを削り取りました。
中のぬかは、きれいな状態です。
一切れ取り出してみました。
見た目には、ただぬかの付いた鯖といった感じ。
匂いは、魚の生臭さと、ぬか漬けが合体した匂いです。
裏返してみる。
少し表面の色が茶色がかっています。
見た目よりも気になるのは味。
早速食べてみましょう。
自家製へしこを試食
へしこの完成品は、もっと身が茶色くなるはずですが、これは白いです。
だから浅漬けへしこなのだと思います。
まずは、生のまま試食してみましょう。
へしこの刺身です。
ここで、妻からこんな質問がありました。
「生の魚を常温で1ヶ月も置いたものを食べても大丈夫?」
その答えは…?
「ぬかの中に生きている乳酸菌が、腐敗菌をやっつけてくれるので大丈夫。
むしろ、乳酸菌がたっぷり含まれているために、お腹にやさしいです。」
とは言いながらも、恐る恐る試食。
モグモグ…
お~!?
珍味~!!
この味を何と例えたら良いのでしょう?
塩辛く、ぬかの香りがしみ込んだ、しめ鯖とでも言いましょうか?
それに熟成チーズのような風味もします。
また、たんぱく質が微生物によって分解され、アミノ酸がたくさん含まれているであろう旨み成分ぎっしりです。
日本酒が飲みたくなるような味です。
ワインだったら、何が合うかよく分かりません。
ちなみに、妻は「どんな味?」と興味津々でしたが、「食べてごらん」と言っても食べませんでした。
6歳の息子も食べませんでした。
4歳の娘は口に入れたけど、吐き出しました。
あ、そうそうこの記事は、食べてから12時間以上経って書いていますが、お腹は壊してないです。
焼いてみました。
奥は、ぬかが付いたまま焼いたもの。
手前は、ぬかを洗い流して焼いたもの。
食べてみると、ぬかが付いているほうが香ばしくて美味しいです。
口の中で、ほろっと溶けるような食感で、口の中に塩辛さと旨みと臭みが広がります。
味は、表面が香ばしい事以外は、生で食べたときとあまり変わりません。
ちなみに、妻は、ほんの1ミリくらい口にして、すごい表情をして、しばらく固まっていました。
6歳の息子は全く食べませんでした。
4歳の娘は口に入れて「グエー」と言いながらお茶で流し込んでました。
私個人としては、満足の出来だったのですが、家族の口には合わなかった模様。
発酵系の珍味だから、好き嫌いがあっても仕方ないか…
では、そんな家族を喜ばせるほどの、美味しいへしこ料理を研究してみようと思います。
へしこは、味が強すぎるので、そのままで食べるよりも、料理のアクセントとして使う方が効果的です。
へしこ料理を作る
まず、へしこを漬けていたぬかを炒ると、ふりかけになるという記述を読みまして、試してみることにしました。
フライパンで、ぬかの水分が完全に飛んで、カリカリになるまで炒ります。
へしこの糠ふりかけごはん。
味は…
意外と美味しいぞ!
塩味と魚の味と、発酵による旨みによって完成された味になっています。
乾燥したぬか漬けを食べているようなイメージかな。
意外と美味しいのですが、もう一度作って再び食べようとは思わないですね。
へしこ茶漬け。
美味しいです!!
やはり、へしこは茶漬けにすると美味しいという記述が多く見受けられましたが、その通りです。
へしこの強い味が、出汁の味を良い味にして、わさびとネギが、臭みを和らげて調和しています。
へしこチャーハン。
これも美味しいです。
へしこの強い味がアクセントとなって良い味が出ています。
やはりへしこは、アクセントとして使うのが良いみたいです。
和食は繊細な味付けなので、へしこのような強い味は、まだまだ使える可能性はありますが、使い道が限定されると思います。
アンチョビのように洋食に使うと、もっと幅広く使えるのではないかと思いつきました。
へしこソースパスタ。
焼きへしこのほぐし身をオイル系ソースと絡めてネギをトッピングします。
うまい!!
味は、やはりアンチョビソースに似ています。
へしこは、考えていた通りアンチョビの代用として使えそうです。
へしこのケーク・サレ。
う、うまい!!
自信が無く3個しか作りませんでしたが、もっと大量に作って近所に配ったら良かったと思うほど美味しいです。
せめて、レシピだけでも載せておきます。
◆へしこのケーク・サレ
焼きへしこ 15g(ほぐす)
小麦粉 50g
卵 1個
オリーブオイル 30g
青カビチーズ 10g(無いほうが良いかも)
ピザ用チーズ 30g
うす口醤油 小さじ1/2
塩 少々
コショウ 少々
タイム 少々(あれば)
刻みネギ 適量
ベーキングパウダー 2g
※分量はアバウトです。
全ての材料を混ぜて180℃のオーブンで30分焼いたら出来上がりです。
〈まとめ〉
今回のへしこ料理に対する家族の反応は?というと、イマイチでした(笑)
けど、生食したときのような、満場一致でマズイという反応は無く、料理によってウマイマズイと意見が分かれました。
とにかく、へしこを入れることによって、クセの強い味になります。
また、アンチョビを使用する料理全てにおいて、へしこで代用できると思います。
だからもう、洋食においては、これ以上へしこ料理を紹介する必要はないでしょう。
もう、へしこがあればアンチョビが無くても大丈夫です。
てか、普通へしこが手に入りませんね。
現在は、日本産のへしこよりも外国産のアンチョビのほうが簡単に手に入ります。
福井県のへしこ関係者の方は、イタリア料理屋などとコラボして、へしこの魅力をどんどん発信したら良いと思います。
そして、日本発のへしこで海外のアンチョビなどを凌駕していってほしいですね。