お馴染みのビール作りでございます。
今までは、ビールキット缶を使ってビールを作っておりましたが、それだけでは物足りなくなってきました。
より本格的な、麦芽からのビール作りに挑戦してみようと思います。
1.ビールの原料は大麦麦芽
2.なぜ糖化(マッシング)が必要なのか
3.ビールキット缶を使えば糖化(マッシング)は不要です
4.麦芽からのビール作り工程
5.麦芽からのビール作り開始
5-1.破砕 約30分
5-2.糖化(マッシング) 約1時間
5-3.麦汁を濾す 約10分
5-4.煮沸して、ホップを加える 約1時間
5-5.冷却してイーストを加える 約30分
5-6.1次発酵 約1週間
5-6-1.1次発酵開始から9日経過
5-7.瓶詰め 約1時間
5-8.2次発酵 約1週間
5-9.熟成 1週間~2週間以上
5-10.完成
6.麦芽からの手作りビール第2弾
7.最後に一言
ビールの原料は大麦麦芽
基本的な事から説明しますが、ビールは大麦の麦芽から作られます。
大麦麦芽は、大麦が発芽した状態で乾燥させて生長をストップさせたものです。
大麦は、主成分がデンプンです。
大麦が生長するためには、デンプンを糖に変えなければエネルギーにできないから、発芽するとデンプンを分解するアミラーゼという酵素が活性化します。
その酵素を利用すると、麦芽のデンプンを糖に分解させることができます。
ビールを作るには、まず麦芽のデンプンを糖に分解させる必要があるのです。
麦芽のデンプンを糖に分解させる事を、糖化(マッシング)と言います。
なぜ糖化(マッシング)が必要なのか
お酒というのは、酵母菌が糖をアルコールに分解することで作られます。
酵母菌は、デンプンをアルコールに分解する事はできません。
ビール作りでは、まず麦芽のデンプンを糖化させる必要があるのです。
また、日本酒の場合ですと、日本酒の原料はお米です。
お米もデンプンが主成分ですから、お米のままではお酒になりません。
日本酒は、麹菌が作る酵素によって、お米のデンプンを糖化して作ります。
また、ワインの原料はブドウですが、ブドウには最初から糖分が含まれているので、糖化を行う必要はありません。
ビールキット缶を使えば糖化(マッシング)は不要です
私が今までやっていたキット缶でのビール作りは、すでに糖化して煮詰めたうえにホップまで加えたものが缶に詰め込まれているので、糖化は不要で、発酵させるだけで完成でした。
キット缶にはほぼ全ての原材料が入っているので、簡単で美味しいビールを作る事が出来ます。
その反面、完成するビールは、キット缶の種類によって味が決まってしまうのです。
キット缶も様々な種類があるので、ある程度はバリエーションがあるのですが、それでも限られています。
それに比べて、麦芽からのビール作りは、糖化から始めなければいけませんが、使用する麦芽の産地や種類を選び、好みでブレンドしたりすることが出来ます。
またホップも好きな品種を選び、ブレンドする事も自由です。
おまけに、その他のハーブや香辛料、副原料なども好みで加える事が出来ます。
要するに全てが自由なんです。
可能性は無限大で、何を作ってもOKです。
ワクワク心躍りますね。
ただ、配合を失敗すると、とんでもなくマズいビールが出来る可能性もあります。
まあしかし、それも楽しいじゃないですか。
麦芽からのビール作り工程
ざっと以下のような工程で作ります。
作りはじめから飲めるまで、およそ1ヶ月です。
1.破砕 約30分
2.糖化(マッシング) 約1時間
3.麦汁を濾す 約10分
4.煮沸して、ホップを加える 約1時間
5.冷却してイーストを加える 約30分
6.1次発酵 約1週間
7.瓶詰め 約15分
8.2次発酵 約1週間
9.熟成 1週間~2週間以上
10.完成
麦芽からのビール作り開始
麦芽からのビール作り初挑戦になります。
スタイルは、私の好きなアメリカンペールエールにしてみます。
〈材料 完成量2リットル分〉
北米産麦芽 80g
カラメルモルト 10g
水 2リットル以上
ホップ (ガレーナ種) 3g
ホップ (カスケード種) 3g
アイリッシュモス 1.5g
エールイースト 1.5g
※この分量だと、アルコール1%未満のビールが出来上がります。
日本の法律ではアルコール1%を越えるビールを作ってはいけません。
上記レシピの北米産麦芽を400g カラメルモルトを50gにして作るとアルコール分5%くらいのビールになりますが、やってはいけません。
すり鉢又はグラインダー
鍋 2個
温度計 1個
ザル 1個
2リットルのペットボトル 1本
500mlの炭酸用ペットボトル 4本
楽天の ブリューランド というショップで仕入れた北米産麦芽。
私はいつもこのショップでビール原料を仕入れています。
これがビールの主原料となります。
こちらは、カラメルモルト。
麦に水分を含ませて蒸し、デンプンの一部を糖化させてから、その糖分をカラメル化させたものです。
ビールに甘味と色を付けます。
1.破砕 約30分
すり鉢で麦芽をゴリゴリと挽きます。
すでに挽き割り済みの麦芽も売っているので、それを使えば、この工程を省略する事ができます。
しかし、美味しさを追求するなら挽きたてでしょう。
例えばコーヒー豆なんて、挽きたてと、そうでない物の香りは比べ物にならない程違いますから、必ず淹れる直前に挽きます。
そば粉や小麦粉なども挽きたての風味の良さは格別です。
石臼があれば自分で挽きたいくらいです。
また、お米は精米したてが断然美味しいので、なるべく精米したてを買うようにしています。
かつお節は、削りたての風味良さと言ったらたまりません。
削り器があれば自分で削りたいくらいです。
話はそれましたが、要するに麦芽も、挽き割り済みを買うより、自分で挽いた方が断然美味しいという事です。
ゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリ…
頑張ってみましたが、硬くて全然割れません。
10分くらい挽いた結果がこれです。
最初とほとんど変わっていません。
麦芽は挽き割り済みを買った方がいいかも知れませんね。
いやいや、ちょっと待った。
すり鉢がダメならグラインダーがあります。
マルチブレンダーのグラインダー機能で、ギュイーンと麦芽を粉砕します。
5秒くらいでこんなになりました。
この時は、このくらいの細かさでOK。
と思いましたが、よく見ると全く潰れていない物もちらほら混ざっているので、もう少し細かくしておいた方が良いです。
ちなみにグラインダーでは5秒で細かく出来ましたが、一度に細かく出来る量は30gくらいなので、何回も何回もこれを繰り返す事になります。
やはり、麦芽は挽き割り済みを買った方がいいかも知れません。
全ての麦芽を粉砕して鍋に入れました。
2.糖化(マッシング) 約1時間
水2リットルを加えて、かき混ぜながら火にかけます。
35℃になるまで加熱して、35℃を5分保ちます。
これを酸休止と言います。
35℃でフィターゼという酵素が活性化して、フィチン酸という酸を作り出し、酸性になります。
酸性の条件である方が糖化酵素の働きが良くなるので、酸休止を行います。
けど、麦芽に水を加えた時点で酸性になっているので、酸休止は省略しても特に問題は無いみたいですが、とりあえず初めてなのでやってみました。
次に50℃まで加熱して、50℃を30分保ちます
これをタンパク休止と言います。
タンパク質分解酵素が良く働く温度なので、タンパク休止と言います。
ビールに含まれる余分なタンパク質を分解する事によって、クリアな味わいになる事が期待できますが、クリアである事が良いこととは限りません。
また、タンパク質を分解してできるアミノ酸が、酵母菌が増殖する為の栄養源となるために、タンパク休止を行います。
もし、クリアな味が身上のラガービールを作る場合は別ですが、今回のようなアメリカンペールエールを作るのならタンパク休止を省略しても特に問題は無いみたいです。
けど、初めてなので、とりあえずやってみました。
次に、62℃~70℃の間を30分保つ。
これが糖化です。
糖化酵素が65℃で活発に働くので、この温度を維持します。
オートミールのような、グラノーラのような匂いがします。
これが大麦の匂いなんでしょう。
77℃以上を5分保つ。
酵素失活化と言います。
3.麦汁を濾す 約10分
ザルで籾殻を濾し取ります。
下に落ちた液体が1番搾り麦汁です。
さらに、籾殻に水をかけて、籾殻内に残っている糖分を取り出せば、それが2番搾りとなります。
今回は1番搾りのだけ使用しました。
1番搾り麦汁の味は、オートミールのようなグラノーラのような香りのする甘い汁です。
4.煮沸して、ホップを加える 約1時間
1時間煮沸します。
灰汁が浮くので、それは取り除きます。
煮沸を始めて15分後、ガレーナ種のペレットホップを投入。
これはビールに苦味を付けるためのホップです。
これがペレットタイプのホップです。
煮沸終了1分前(煮沸開始から59分後)に、カスケード種のペレットホップと、アイリッシュモスを水で戻したものを投入。
この段階でのホップは、ビールに香りを付けるのが目的です。
アイリッシュモスとは、これです。海藻を乾燥させたもので、ビールのタンパク質を吸着して沈殿するので、ビールがクリアになります。
このように水で戻しておいてから投入します。
5.冷却してイーストを加える 約30分
煮沸が終われば、鍋ごと冷水に浸けるなどして、なるべく早く冷やします。
25℃まで温度が下がればイーストを投入します。
今回は、水でイーストの予備発酵をしてから投入してみましたが、ドライイーストのまま投入しても問題ありません。
6.1次発酵 約1週間
ペットボトルに移し替えて、暗い所に置いておきます。
蓋は、ボトル内で発生した炭酸ガスを逃がす事が出来るように、軽く閉めます。
1日経過しました。
発酵が始まっています。
底に沈殿している成分が、中で発生する炭酸ガスとともに、浮かび上がっては、また沈み、浮かび上がっては、また沈みを繰り返しています。
透明の容器で発酵させると、発酵している様子がよく分かり、楽しいです。
1次発酵開始から9日経過
我が家の押入れで9日間発酵させました。
季節は、3月末から4月初めにかけてです。
温度によって発酵の期間は変わってきますので、発酵完了のタイミングはビールの状態を見て判断します。
ビールの状態を見るなんて難しいと感じるかもしれませんが、幸いにも酵母菌の発酵する様子は、泡がプクプク出たり、オリが浮いたり沈んだり、などと、動きがあるので分かりやすいです。
沈殿したオリが、気泡と共に浮いたり沈んだりしている状態は発酵途中と判断し、オリが沈殿したまま動かなければ1次発酵完了と判断すれば良いでしょう。
8.瓶詰め 約15分
完成量2リットルなので、耐圧の500ml入りペットボトル4本を用意して、きれいに洗っておきます。
各ボトルに50mlの水と3gの砂糖を入れ溶かしておきます。
砂糖3gというのは、これを酵母菌が炭酸ガスとアルコールに分解する事によって、ビールが炭酸になるのです。
この砂糖をプライミングシュガーと言います。
また、水50mlというのは砂糖を溶かす水分と、煮沸の段階で飛んだ水分を補う意味もあります。
本来なら水分量は煮沸中に加水して調節すべきです。
もちろん加水はしましたが、加水の量が少なかったみたいで、それを今補うのです。
加水が適切にされていたら、水はもっと少なく15mlくらいでも良いでしょう。
画像はイメージ図です。
ボトル詰め時の様子を撮影してなかったので、参考までに過去の記事 手作りビール第3弾の結果は? の画像を貼りました。
このようにシリコンチューブを使ってサイフォンの原理でペットボトルに詰めます。
ボトル詰め完了。
8.2次発酵 約1週間
ボトル詰めしたまま押入れなどの冷暗所で置いておきます。
この間に、ボトル詰め時に入れたプライミングシュガーが炭酸ガスとアルコールに分解されて、ビールが炭酸になっている事でしょう。
9.熟成 1週間~2週間以上
同じく押入れなどの冷暗所で熟成させます。
この熟成が大切です。
一応、現段階で飲むことは出来ますが、まだ美味しくないです。
早く飲みたい気持ちを抑えて、じっくりと待ちましょう。
熟成により、美味しいビールに変身します。
10.完成
ボトル詰めから18日後。
そろそろ飲んでみましょう。
いただきま~す。
グビッ
か~っ!
本当にアメリカンペールエールの味だ!
手作り感あふれる荒削りな味ですが、どこにも売ってない味で、それなのに、ちゃんとアメリカンペールエールの味がします。
ただ、美味しさで言うと、もう一歩でしょうか。
何が足りないかは、まだよく分かりません。
とりあえず、麦芽の糖化(マッシング)初挑戦で、この味なら上出来だと自分で評価して満足しております。
麦芽からの手作りビール第2弾
こちらは第2弾。
〈第2弾の材料〉
〈モルト〉
Weyermann ペールエール 50%
イギリス産エールモルト 50%
〈ホップ〉
ファッグル種 90%
カスケード種 10%
〈イースト〉
アメリカンエールイースト
※材料は楽天の ブリューランド というショップで仕入れました。
ビールの原料は、いつもここのショップで仕入れています。
以上の割合で仕込み、10日間1次発酵させてからボトル詰めをして、その後17日経ったものです。
スタイルはイングリッシュペールエールっぽいけど、ちょっと違うペールエールです。
格好良く言うと、「オリジナルペールエール」です。
もっと格好良く言うと、「スペシャルペールエール」です。
それよりも、「スペシャルエール」と言った方がもっと格好良いかな。
いや、言い方なんかどうでもいい。
言い方よりも味ですよ味。
ではいただきます。
グビッ
か~っ!
またこれも手作り感あふれる荒削りな味です。
確かに、オリジナルなペールエールの味です。
ふくよかなモルトの香りとコク、そしてホップの苦味が効いてます。
まず、ホップについてですが、これには主にファッグル種を使いましたが、ファッグル種はあまり合ってないような印象でした。
ホップには様々な種類があり、それぞれに個性的な苦味と香りがあります。
私はまだ、ホップの種類とその苦味と香りや特徴まで把握してないので、とりあえず試しにファッグル種を使ってみました。
その結果、あまり合ってないような印象でした。
しかしこれが、もう1週間熟成させたらまた印象が変わる可能性もあります。
熟成期間によってホップの香りも変わりますから、現段階でこれは合わないと判断するのはまだ早いかも知れません。
また、ホップをどれだけ煮沸するかによって苦味と香りが変わります。
煮沸時間が長ければ、苦味が強く、香りが弱くなります。
煮沸時間が短ければその逆です。
苦味を出す為のホップは煮沸の途中で投入して、じっくりと煮出しますが、香りを出す為のホップは煮沸の後半か煮沸後に投入します。
ホップの種類によって、主に苦味を出すために使うものや、主に香りを出すために使うもの、または両方の使い方をするものなどもあります。
ホップをどれだけ煮沸するかによっても、苦味と香りが変わるのです。
ホップも奥が深いという事が分かりました。
まだまだ試行錯誤を繰り返して情報を蓄積していきたいです。
最後に一言
それから、糖化(マッシング)についてもいろいろ感じましたが、それを語るとあまりに長くなりそうなので機会を改める事にします。
とにかく糖化はビールの味を左右します。
いや、それどころではありません。
糖化はビールの味を上下左右します。
それと、もう一つだけ言いますが、糖化から行うビール作りは面白いです。