牡蠣を熟成発酵させて作るオイスターソースの研究結果
牡蠣と塩だけで熟成発酵させるとオイスターソースができるはず。
それで、実際に2年間熟成発酵させました。
その結果、予想もしない調味料が完成しました。
さらにその調味料を使って2品作ります。
そして最後にオイスターソースの謎に迫ります。
【目次】
1.オイスターソースの作り方を調べると
2.本物のオイスターソースを仕込む(2021年12月4日)
2ー1.1日後(2021年12月5日)
2ー2.42日後(2022年1月15日)
2ー3.2年後(2023年12月2日)
3.2年熟成牡蠣を観察する
4.火入れ
5.熟成牡蠣調味料を味見
6.熟成牡蠣炒飯を作る
7.熟成牡蠣とキャベツのスパゲティーを作る
8.熟成牡蠣料理2品を試食
9.本物のオイスターソースとは?
10.まとめ
11.動画で説明
オイスターソースの作り方を調べると
「オイスターソースの作り方」をウェブで調べてみたら、上位には牡蠣を発酵させずに調味料と一緒に煮込んで作るレシピがヒットします。
私も過去にそういったレシピ記事を書いた事があります。
しかし、ウィキペディアでは以下のように書かれています。
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/オイスターソース
上の画像は、ウィキペデイアのオイスターソースについての記述をスクショして拡大したものです。
「本来は生がきを塩漬けにすることで発酵熟成してできる調味料である」と書かれているのが分かりますよね。
やはり発酵させるのか、と思いました。
同時に、発酵なら私の得意分野です。
発酵させるのならば、どのように発酵させるのでしょうか。
牡蠣を発酵させる具体的な情報は、本や他のサイトなど、いろいろ調べましたが見つかりませんでした。
じゃあ、分からないなりに適当にやってみようと思いまして、2年前に適当に仕込んでみました。
本物のオイスターソースを仕込む(2021年12月4日)
本物のオイスターソースの材料(今回仕込んだ量)
牡蠣 1p
塩 牡蠣の20%の重さ
材料は牡蠣と塩だけです。
瓶に牡蠣と塩を入れただけです。
蓋をしてこのまま放置です。
塩は勝手に溶けるでしょう。
1日後(2021年12月5日)
牡蠣から水分が出てます。
塩は完全には溶けずに沈んでます。
42日後(2022年1月15日)
塩は完全に溶けて、色が少し茶色っぽく
変わりました。
2年後(2023年12月2日)
そして、2年経ちました。
こんな状態です。
水分がたくさん出てます。
すこし茶色くなった水分の中に牡蠣が浮かんでいます。
牡蠣は溶けると思ってたのですが、溶けずに形を保っています。
2年間どこに置いてあったかというと、リビングの片隅に置いておきました。
冬は暖房をかけた暖かい状態で、夏は冷房をかけて涼しい状態の部屋で2年間です。
本来は、1年だけ熟成させるつもりだったのですが、1年経っても牡蠣が溶けないので、そのまま放置してたら、気が付けば2年経ってました。
2年熟成牡蠣を観察する
拡大してみます。
オイスターソースには見えませんね。
蓋を開けました。
これは何と形容すればいいのでしょうか。
とにかく変な物になってます。
これが牡蠣と知ってるから牡蠣に見えますが、知らなかったら何か分かりません。
匂いは、全然強くないです。
蓋を開けたら漂ってくるほどではなく、鼻を近づけて匂いを嗅がないとわからない程度です。
買ってきたばかりの牡蠣とほとんど変わらないです。
イカの塩辛のような匂いも感じられます。
火入れ
お鍋に2年熟成した牡蠣を入れ、火にかけます。
沸騰してきました。
ちょっと混ぜてみて、味見してみます。
塩っ辛いです。
腐ってるとか変な味がするとか、そういうのは、全くありません。
大丈夫です。
けど売ってるオイスターソースの味ではありません。
どうしていいかわからなくて、とりあえず5分くらい煮詰めました。
これをガラスの瓶に入れます。
とりあえず、何かよくわからない調味料が完成しました。
2層に分かれてます。
上には比較的澄んだ液体と縮んだ牡蠣本体が浮いてます。
下は濁った液体です。
これはオイスターソースとは呼べません。
味が全く違うからです。
とりあえず「熟成牡蠣調味料」と呼ぶことにします。
熟成牡蠣調味料を味見
全体を混ぜて縮んだ牡蠣と一緒に味見してみます。
塩っからくて、海の味がします。
牡蠣のお腹の中の味が凝縮されて強烈な海の味に感じます。
あと、イカの塩辛と共通する香りもあります。
初めての味です。
初めての調味料ですから、どのように料理に使えば良いかというノウハウは、もちろんありません。
少し考えた結果、この熟成牡蠣調味料を使って炒飯とスパゲティーを作る事にしました。
熟成牡蠣炒飯を作る
熟成牡蠣炒飯の材料(一人前)
ご飯 1膳
ニンニク 1かけ(みじん切り)
ショウガ 少々(みじん切り)
溶き卵 1個分
刻み葱 30g程度
熟成牡蠣 大さじ1
ラード 大さじ1
コショウ 少々
フライパンを熱して、ラードを溶かし、刻んだニンニクと生姜、刻み葱、溶き卵、ご飯を加えます。
ご飯は冷やご飯をチンしたものです。
だから固まってます。
ご飯をほぐします。
全体にコショウを振り、混ぜます。
熟成牡蠣を入れます。
ご飯をほぐしながら、牡蠣の水分を飛ばしながら混ぜます。
お茶碗に詰め込み、お皿をかぶせて、ひっくり返します。
これでチャーハンの完成です。
これの味は後述します。
熟成牡蠣とキャベツのスパゲティーを作る
熟成牡蠣とキャベツのスパゲティー(一人前)
スパゲティー 80g
ニンニクスライス 1かけ分
キャベツ 100g程度
熟成牡蠣 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
お湯を沸かしてスバゲティを茹でます。
麺を茹でている間に、フライパンを熱して、オリーブオイルでニンニクスライスを弱火で揚げるように炒めます。
ニンニクの香りが出たら、熟成牡蠣・キャベツを入れ炒めます。
キャベツにある程度火が通ったら火を止めて、麺が茹で上がるのを待ちます。
麺が茹で上がれば再びフライパンに火をつけ、麺を入れ混ぜ、お皿に盛ります。
これで、熟成牡蠣とキャベツのスパゲティが完成しました。
熟成牡蠣料理2品を試食
では、熟成牡蠣料理2品をいただきます。
まずは熟成牡蠣炒飯をいただきます。
案外普通の炒飯のように感じました。
と言うのも、先ほど熟成牡蠣をダイレクトに味見したので、その強烈な味の記憶があるから、炒飯という料理で薄まった状態で食べると、普通に感じました。
しかし、牡蠣の香りと言うか海の香りはします。
そして、イカの塩辛のような香りも感じられます。
具としての牡蠣の味はありませんが、炒飯全体に熟成牡蠣の味が広がった炒飯です。
続いて熟成牡蠣とキャベツのスパゲティーです。
こちらの方が、より熟成牡蠣の個性が感じられます。
海の味が強いですから、それに対抗するにはキャベツでは香りが弱いです。
ネギなどの香りが強い系の野菜を使った方が良いと感じました。
そして、2品とも、熟成牡蠣だけで味付けしましたが、ちょっと味が個性的すぎました。
今回は、熟成牡蠣の味を確認するために、わざとそうしましたが、より美味しくいただくには隠し味的な使い方の方が良いと思いました。
熟成牡蠣の使い方についてベストアンサーを求めるのが目的ではないので、熟成牡蠣料理の研究はこの辺にしておきます。
本来の目的は、本物のオイスターソースの作り方を知りたいのです。
本物のオイスターソースとは?
ウィキペディアに「本来は生がきを塩漬けにすることで発酵熟成してできる調味料である」と書いてある事から、実際に実験してみましたが、この情報は疑わしい事がわかりました。
魚介類と塩だけで、醤ができる事はすでに他の実験で明らかになっています。
魚醤は何度も作りました。
魚と塩だけで放置しておけば魚は溶けて醤ができるのです。
こんなの簡単すぎて失敗なんてあり得ません。
以下に魚醤の作り方の記事を貼っておきます。
しかし、牡蠣は2年放置しても溶けませんでした。
繰り返しますが、ウィキペディアに書いてある事は疑わしいです。
今回の熟成牡蠣についてYouTube動画をアップしたら視聴者の方から非常に興味深いコメントをいただきました。
以下に全文を引用します。
u1938さんのコメント
オイスターソースについて私も調べてみました
すでに調べて知ってらっしゃるかもしれませんが、英語版wikiの参考書物(1876)では
1.牡蠣を鉄のたらいで30分でる
2.牡蠣を鍋から取り出し天日干し。日が暗い場合は火で乾燥
3.(牡蠣が半分くらいの大きさになったら5-6日持つ。何ヶ月も保存するなら追加で2時間火で乾燥するか2日間天日干し)
↑牡蠣メイン
↓残り汁、ここから
4.鉄のたらいで茹で汁が半量になるまで加熱。更に水がなくなり黒っぽいソースができたら終了
5.ソースには海水、塩、大豆(醤油?)が加えられることが多い
日本版wikiには「元々塩漬けで発酵熟成」と書かれていますが、参考文献は文部科学省が出してる文書の一文、その一文の根拠がわかりません。
中国のネット情報では「オイスターソースは発酵食品じゃない」とはっきり書かれていて、作り方も英語版wikiで参考引用文献(1876)と一致しています。
・伝統的な作り方:残り汁(または茹でた牡蠣を潰して)を濃縮
・新しい作り方:酵素による牡蠣の分解と中国サイトでは書かれています
とても素晴らしいレポートです。
私も色々調べましたが、本物のオイスターソースは、牡蠣の煮汁を煮詰めて醤油などで味付けした物ではないかと思い始めています。
まだ確証はありません。
これはオイスターソースの謎という事で、引き続き研究を続けたいと思います。
話は変わりますが、中華調味料で甜麺醤の謎というのがありまして、その謎を何年もかけて解明した記事があるので、参考までに以下がその記事です。
まとめ
- 日本のウィキペディアにオイスターソースは「本来は生がきを塩漬けにすることで発酵熟成してできる調味料である」と書かれている。
- 実際に牡蠣を塩漬けにして2年熟成発酵させた。
- 2年熟成牡蠣はオイスターソースとは別の調味料になった。
- 熟成牡蠣調味料は非常に個性的な調味料だった。
- ウィキペディアのオイスターソースの作り方についての記述は疑わしい。
- 本物のオイスターソースの作り方について何が正しいかよく分からない。
- オイスターソースの謎にぶち当たった。
動画で説明
動画では私が出演して説明してます。
動画でしか表現できない事もあるので、併せてご覧ください。