舞茸のタンパク質分解酵素で肉を溶かして出来たものは…?
舞茸にはタンパク質を分解する(プロテアーゼ)という酵素が含まれています。
だから舞茸で肉を溶かす事ができます。
実験の結果、予想外の事が起こりました。
【目次】
1.舞茸のタンパク質分解能力は凄い
2.舞茸で肉醤を作れるのでは?
3.腐らないようにするには?
4.実験開始
5.思い切って方向転換
6.お味は?
7.今回の実験で分かった事
8.動画で説明
舞茸のタンパク質分解能力は凄い
以前から、舞茸にタンパク質分解酵素が含まれているという事は、知識としては知ってました。
しかし、それがどの程度のものかは知りませんでした。
ある日、何も考えずに、舞茸と豚肉のスープを作った事がありました。
舞茸と豚肉という組み合わせは、何の考えもなく、たまたまそうなっただけです。
それで、豚肉を何g入れたか忘れましたけど、完成したスープは、明らかに肉の量が減っていました。
あれ?肉どこ行った?
誰や!?
つまみ食いした奴は!?
出てこんかい!!
…と思うくらいに肉が少なくなってました。
もちろん誰もつまみ食いしてませんよ。
舞茸が肉を溶かしたのです。
そんな事があって、その時初めて、舞茸のタンパク質分解能力を目の当たりにしたのです。
これはすごい能力だと思いました。
舞茸で肉醤を作れるのでは?
舞茸にこれほどのタンパク質分解能力があるなら、舞茸で肉を溶かして肉醤を作れるのではないかと思ったのです。
肉醤というのは、お肉で作った醤油の事です。
そして実験しました。
舞茸と挽肉と塩を混ぜて置いておくと、肉が分解されて、熟成が進み、肉醤ができると仮定して、それを半年熟成させました。
その結果について、詳しくは↓こちらの記事をご覧ください。
↑この記事で説明してる内容は、舞茸でなく米麹の力で肉を溶かして作る肉醤についてです。
舞茸での実験は、この記事の中ではオマケです。
この記事の本題である米麹で肉を溶かせば、本当にお肉で美味しい醤油を作る事ができます。
これが実験で、舞茸と挽肉と塩を混ぜて瓶に入れ、半年置いたものです。
蓋を開けると、熟成が進んでいるように見えますが、これが腐っていました。
いや、熟成は確かに進んでました。
正確に言うと、腐敗と熟成が進んでいたという事です。
これは、米麹で仕込んだ物です。
こちらは肉を溶かして、さらに麹の力でなぜか腐らずに上手くできます。
これを火入して濾過すると、澄み切った肉醤が出来ました。
舞茸では肉は溶けるけど、腐ってしまうみたいです。
腐らないようにするには?
それでは、腐らないようにするには、どうするかと考えました。
まず、塩分濃度を上げるという方法が考えられます。
しかし、塩分濃度を上げて上手く出来ても、完成した醤油の塩分濃度も上がります。
塩分濃度が高いと料理に使いにくいですし、やはり美味しくないといけません。
そこで、タンパク質分解酵素が最も活発に活動する温度に着目しました。
舞茸のタンパク質分解酵素は、40〜60℃くらいの温度で活発に分解能力を発揮すると考えられます。
最適な温度を保つと、おそらく1時間もあればお肉は溶けてしまうでしょう。
もし、1時間で作る事ができたら、腐る事はありませんね。
腐らないどころか、火入れもしますから、腐る間もなく殺菌されてしまうという作戦です。
ということで、加熱して肉を溶かしてみましょう。
実験開始
【実験の材料】
舞茸 100g
鶏ムネミンチ 200g
塩 60g
舞茸は、みじん切りにします。
鍋に、みじん切りした舞茸、鶏ミンチ、塩を入れます。
塩は、本来は60g入れるべきですが、とりあえずちょっとだけ(2g程度)にしておきました。
もし、失敗してお肉が溶けなかったら、そのまま肉団子として食べられるように塩を少なくしています。
上手くいってから塩を足せばいいのです。
そして、混ぜます。
これを混ぜながら、湯煎で温めます。
お湯の温度は60℃くらいです。
お肉の温度は、最初は冷蔵庫から取り出したばかりなので、冷たかったですが、徐々に上がってきました。
お肉の温度が40℃を超えたあたりから、酵素が活性化するはずです。
最初に比べてお肉が柔らかくなったような気がします。
お肉の温度は51℃くらいまで上がりました。
お肉に少し火が通って色が白っぽくなってきました。
そして、お肉は確実に柔らかくなってます。
蓋をして10分くらい置いたり、混ぜたりして徐々に温度が上がるようにしています。
お肉は60℃を超えました。
肉がドロドロになってきました。
明らかに溶けてますね。
64℃くらいになりました。
また蓋をして10分くらい置いたら、完全に溶けてクリームみたいになりました。
もう湯煎でなくても大丈夫なので、直火で加熱します。
70℃くらいまで加熱しようと思います。
70℃になりました。
蓋をして10分くらい置いておきます。
もうあまり変化は無いようです。
お肉は溶けましたが、醤油って感じではないですね。
加熱すると、お肉が溶けると同時に火が通って白くなるのかもしれません。
これはどう見ても醤油ではありません。
思い切って方向転換
ここで思い切って方向転換して、水を足してスープを作る事にしました。
沸騰してきました。
最後に、アクセントに生姜のすりおろしを少し入れました。
お椀によそって、ネギとトッピングして、鶏肉のポタージュスープの完成です。
お味は?
見た目は粕汁みたいですね。
しかし、この白さは、酒粕ではありません。
溶けたお肉の白さです。
固形分は舞茸だけです。
この味をどのように表現すればいいのでしょうか。
まさに鶏肉のポタージュスープというのがふさわしいです。
お肉が溶けてドロっとして、舌触りがザラザラした感じがあります。
ミクロの単位でお肉の細かい粒があるのかもしれません。
味は、鶏肉を液体にしたような味です。
舞茸の風味と生姜はいいアクセントになってます。
お肉のタンパク質が分解されて、アミノ酸が豊富なはずですが、旨味はそれほど強く感じませんでした。
アミノ酸の全てに旨味を感じる訳ではないので、アミノ酸があれば旨味があるという訳でないのですね。
美味しくもなく、不味くもない味でした。
…というのは私の感想です。
妻は残してたから不味かったのでしょう。
今回の実験で分かった事
- 舞茸はお肉を溶かす。
- 舞茸の酵素は60℃くらいが最も活性化する。
- 舞茸で肉醤を作るのは困難。
- 鶏肉のポタージュの味はイマイチ。
舞茸は、お肉を溶かします。
舞茸のタンパク質分解酵素は、私がやってみて60℃くらいが最も活性化したと感じました。
舞茸を使って肉醤を作るのは困難。
鶏肉のポタージュスープの味は、あまり美味しくない。
これは、レシピに改善の余地があるというだけで、絶対に美味しくないというわけではありません。
まだまだ舞茸活用の可能性はあります。
例えば、胃腸が弱い人や、歯が弱い人は、舞茸を活用してお肉を溶かしてからタンパク質を補給すると良いかもしれません。
60℃くらいで最もお肉を溶かしてくれますから、舞茸とお肉を入れてスープを作る時に、60℃くらいの温度でしばらく置いておくと、お肉が溶けて少なくなるでしょう。
80℃を超えると酵素が失活するので、室温の水の中に舞茸とお肉を入れて徐々に加熱して、60℃あたりをキープするといいです。
沸騰した水に舞茸とお肉を入れても、お肉は溶けません。
お肉が溶けるというのは、お肉が柔らかくなるのとは違います。
お肉が少なくなるような感覚です。
お肉の量が減って損したような気分になりますが、栄養面では同じですからね。
動画で説明
動画ではオトコ中村が自ら出演し、熱く語っています。
動画でしか表現できない事もあるので、併せてご覧ください。