日本酒を酢酸発酵させ米酢を作る【米酢後編】
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前編では
お米が米酢に変化する流れと、米酢を作る流れに付いて説明してから、実際に米酢を作り始めました。
日本酒をお酢にするには、ここに酢酸菌を入れてやればお酢になります。
酢酸菌が活躍するのに最適な環境を整えてあげると、効率よくお酢を作ることができます。
だから、酢酸菌が好む環境を作ってやるのです。
【後編の目次】
1.米酢の材料
2.材料の説明
2−1.日本酒
2−2.水
2−3.酢
2−4.レーズン
2−5.日本酒と水の割合について
2−5−1.日本酒のアルコール度数を判定する方法
3.米酢を仕込む
3−1.1日後
3−2.さらに3日後 仕込みから4日後
3−3.さらに1週間後 仕込みから11日後
4.手作り米酢の味
5.まとめ
6.動画で説明
米酢の材料
【米酢の材料】
作った日本酒 350ml
水 50ml
市販のお酢 200ml
オイルコーティングされてないレーズン 10g程度
この分量で、およそ600mlの米酢が完成します。
材料の説明
それでは、材料について説明していきます。
酢酸菌が好む環境を理解するには、材料についての理解を深めた方がいいですから。
そういった事を理解していれば、もし、酢酸発酵が上手くいかずに予期せぬ事態に遭遇しても、適切に対処できる確率が上がります。
日本酒
日本酒を入れるのは当然ですよね。
日本酒のアルコールを酢酸発酵させて、お酢を作るからです。
これを入れないと米酢とは言えません。
水
水を入れるのは、2つの理由があります。
1つ目は、アルコールの濃度が高いと、アルコールの殺菌作用によって酢酸菌が参ってしまうので、水で薄めてアルコールの刺激を押さえてやります。
酢酸菌はアルコールを餌にしますけど、流石にアルコールの濃度が高いと酢酸菌も活動できなくなります。
また、あまりにアルコール濃度が高いと死滅してしまいます。
だからちょっと薄めてやります。
2つ目は、完成したお酢の酸度を丁度良い感じに調節するためです。
アルコール分が高ければ、それをうまく酢酸発酵できたとしても、お酢の酸度が高くなってしまいます。
酸度が高いというのは、要するに酸っぱすぎるという事です。
それなら、お酢が完成してから水で薄めたらいいという考えもありますが、最初から薄めておく方法をとります。
酢
市販のお酢を入れるのは、お酢作りにおいての有害菌である産膜性酵母の発生を抑えるためです。
産膜性酵母は酸に弱いので、お酢を入れる事で、その発生を抑える事ができます。
酢酸菌は酸に強いので、お酢を入れても、もちろん平気です。
むしろ、酸の影響で、他の微生物が活動できなくなるので、酢酸菌の独壇場になります。
だからお酢を入れます。
レーズン
レーズンを入れるのは、レーズンの表面に酢酸菌が付いてるからです。
レーズンに付いている酢酸菌が酢酸発酵を始めてお酢になります。
レーズンはオイルコーティングされてない物をお使いください。
レーズンでなくても、りんごにも酢酸菌が付いています。
りんごのどの部分を使ってもいいですが、りんごを剥いて、皮は農薬が付いてるかも知れないので捨てます。
実の部分は食べます。
種の部分を使うといいです。
普通は、種の部分は何もせずに捨てますが、酢酸菌のスターターとして使ってから捨てると有効利用になりますね。
私がりんごとレーズンをお勧めしてるのは、日本中で、季節に関係なく手に入るからです。
レーズンやりんごでなくても、他にも果実やお花なら酢酸菌が付いてるものがたくさんあるので、そういったものが身近にあるなら、それを入れても良いですよ。
日本酒と水の割合について
それから、もう一度お酢の材料をご覧ください。
【米酢の材料】
作った日本酒 350ml
水 50ml
市販のお酢 200ml
オイルコーティングされてないレーズン 10g程度
ご覧の通り、日本酒350mlと水50mlとなっております。
この日本酒と水の割合の根拠ですけど、日本酒と水だけを混ぜた状態でアルコール8〜10%程度になるようにしてます。
理論上はアルコール6%まで薄めても、お酢としての酸味は確保できます
しかし、酢酸発酵の過程で、アルコールや酢酸が揮発してる可能性があるので、そのロスを考えると8〜10%くらいにしておくのが良さそうです。
日本酒のアルコール度数を判定する方法
売ってる日本酒は、ラベルにアルコール分が書いてありますから、見たら分かりますよね。
手作りの日本酒は、どこを見てもアルコール分なんて分かりません。
普通のご家庭にアルコール分を測定する道具なんてありませんよね。
だから、自分でちょっと飲んでみて、自分の舌で判断する。
もしくは、飲んでみて、どれだけ酔うかという感覚で判断します。
どちらもかなり曖昧な判断基準ですね。
わからなければ低く見積もっておけばいいです。
低く見積もるとは、例えば、飲んでみた結果、これは12〜14%の間くらいかなと思ったら、12%弱と判定しておく。
そういう事です。
そして、今回仕込んだ日本酒は、判定の結果、12%弱と判定されました。
12%弱の日本酒350mlに水50mlを加えると、10%程度になります。
これが日本酒と水の割合の根拠です。
米酢を仕込む
大きめのタッパーに、日本酒、水、お酢、レーズンを入れます。
軽く蓋をして、暖かいところにおいておきます。
酢酸菌は20〜30℃くらいが最も活発に活動します。
夏なら常温で置いておけばいいです。
20℃を下回るとほとんど活動が止まります。
冬なら暖房の効いた暖かい部屋の、冷蔵庫の上などの温かい場所に置いておくのがお勧めです。
春や秋でも冷蔵庫の上が温かいですから、冷蔵庫の上に置いておくのがお勧めです。
また、酢酸発酵には酸素が必要なので、容器は密閉せずに、蓋は緩めに閉める方が良いです。
かといって、アルコールや酢酸は揮発しますから、蓋の隙間が大きく開いてるのはいけません。
隙間が空いてると、虫やゴミが入る事もあるので、虫やゴミが入らない程度で、空気が入るくらいの隙間を開けておくのが理想的です。
1日後
蓋を開けて、レーズンを取り出します。
レーズンを何日も漬けておくと、お酢にレーズンの味が染み出しますから、1日経ったら取り出します。
一粒残らず取り出します。
これで酢酸菌は液の中に広がっているので、酢酸発酵してくれるでしょう。
さらに3日後 仕込みから4日後
蓋を開けて、様子を見てみます。
まずは匂いを嗅いでから、スプーンですくって味見してみます。
酢酸発酵が進むにつれて、お酒のアルコール分が酢酸に変わっていくので、それにつれてアルコールの味が弱まり、酸味が増してきます。
ここでも自分の嗅覚と味覚で判断します。
この時点では酢酸発酵は少し進んでるけど、まだ途中という味でした。
さらに1週間後 仕込みから11日後
蓋を開けて、味を見ると、酸っぱくなってます。
酢になりました。
今回は、11日で完成しました。
もっと早く完成する事もありますし、もっと完成まで時間がかかる事もあります。
酢酸発酵させる条件によって変わりますが、仕込みから完成まで3日〜1ヶ月程度です。
かなり幅があるので、酢酸発酵の進み具合を、味見して判断するのが重要になってきます。
体調の良い時に味見しないと間違う事もあるのでご注意ください。
完成したお酢は、密閉できる容器に移し替えます。
自家製の米酢の完成です。
このように密閉容器に満タン入れて蓋を閉めたら、空気にほとんど触れないので品質を安定させることができます。
使い始めると、中身が減り、容器の中の空気の割合が増えてくるので、そんな場合は冷蔵庫で保存すると良いですよ。
手作り米酢の味
それでは、完成した米酢を飲んでみましょう。
酸っぱいです。
そして、酸味の中に、旨味があります。
いつも言ってますが、手作り酢には旨味があるんですよ。
今回の旨味はまた違います。
なんと言ったらいいか、お寿司のような、酢飯のような旨味があります。
きっとお米の成分がそう感じさせるんでしょうね。
これぞ本物の米酢です。
酢酸菌が生きている生のお酢ですから、きっと健康に良いでしょう。
まとめ
- 日本酒をアルコール発酵させて米酢を作る。
- 日本酒を入れなければ米酢と言えない。
- 仕込み時に水を入れる事でアルコールの殺菌作用を弱め、完成したお酢の酸度を調節する。
- お酢を入れる事で、お酢作りの最大の有害菌である産膜性酵母の発生を抑える。
- 酢酸菌は酸に強いのでお酢を入れても平気、むしろ酸の影響で他の微生物が活動できなくなり酢酸菌の独壇場になる。
- レーズンの表面に付いている酢酸菌が酢酸発酵を始めてお酢になる。
- オイルコーティングされてないレーズンを使う。
- 酢酸菌スターターにりんごの種を入れても良い。
- リンゴやレーズンをおすすめするのは日本中どこでも季節に関係なく手に入るため。
- レーズンやリンゴでなくても果実やお花に酢酸菌が付いてるので身近な所に果実やお花があるならそれを使うと良い。
- 日本酒を水で薄めた時にアルコール分が8〜10%になるように調節する。
- 手作りの日本酒のアルコール度数は飲んでみて自分の舌で判断するか、どれだけ酔うかで判断する。
- 酢酸菌は20〜30℃くらいを好む。
- 酢酸発酵には酸素が必要なので容器は密閉せず緩めに閉める。
- 酢酸やアルコールは揮発する事や虫やゴミが入る事もあるので、空気だけが入る程度の隙間が良い。
- レーズンは仕込んだ翌日に取り出す。
- 酢酸発酵の進み具合は匂いを嗅ぎ、味見して判断する。
という訳で、米酢の作り方は以上になります。
お酢作りシリーズの次回は、バルサミコ酢をご紹介する予定です。
お楽しみにお待ちください。
動画で説明
動画ではオトコ中村が出演して、講義形式で熱く語っております。
動画でしか表現できない事もあるので、併せてご覧ください。