お酢は、アルコールが発酵してできた発酵食品です。
お酢ができる原理さえ理解すれば酢を作ることができます。
お家で簡単に作れる酢の基本編として、穀物酢を作りながら、お酢作りについて詳しく説明していきます。
【目次】
1.酢のできる原理
2.酢酸菌の入手方法
3.穀物酢の材料
3−1.焼酎について
3−2.水について
3−3.市販の酢について
3−4.りんごについて
4.酢を作るのに適した容器
5.穀物酢の仕込み方
6.酢酸発酵に適した温度
7.酢酸発酵が行われているかの見極め
7−1.水滴で判断する
7−2.蓋の凹みで判断する
7−3.匂いで判断する
7−4.味で判断する
7−5.もし1〜2週間経っても酢酸発酵が全く進んでないと思ったら
8.発酵期間について
9.酢酸発酵終了の見極め
10.完成した酢の味
11.酢を無限に繋いでいく方法
12.まとめ
13.動画で説明
1.酢のできる原理
酢(酢酸)は、アルコールを原料に酢酸菌によって作られます。
酢酸菌がアルコールを酢酸に変えることを酢酸発酵と言います。
酢酸菌は、アルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素という2種類の酵素で、アルコールを酢酸に変えます。
ちなみにこれは、人がお酒を飲んだ時に、肝臓でアルコールを分解するのと同じ流れになります。
この構造式なんか覚えなくていいですよ。
説得力を持たせるためにこの図を作っただけです。
読者の皆様には、単純に酢酸菌がアルコールから酢酸を作ると知っていただければ十分です。
だから、アルコールと酢酸菌があれば酢を作れます。
作るためには酢酸発酵が起こりやすい条件を満たさないといけないですけど、一応アルコールと酢酸菌があれば酢を作れます。
2.酢酸菌の入手方法
アルコールは、酒屋さんでも、コンビニにでも行って買ってきたらすぐに準備できます。
けど、酢酸菌はどこにも売ってません。
…と思ってましたが、調べてみると、酢酸菌のサプリというものがあるみたいです。
酢酸菌サプリで花粉症の改善が期待できるそうです。
ひょっとしたら、酢酸菌のサプリを使えば、酢酸発酵を行うことが出来るかもしれません。
けど、この酢酸菌サプリ2021年1月31日現在Amazonで3780円です。
決して安いものではないので、サプリは使わずに、もっと手軽にできる方法でやりましょう。
酢酸菌は、自然界のどこにでも住んでいます。
空気中にも浮遊してますし、果物とかお花とかにも付いてます。
空気中の酢酸菌を捕まえるのはちょっと難しいですけど、果物を使うと簡単です。
その方法は、後述します。
3.穀物酢の材料
【穀物酢の材料】完成量は1リットル
20%の焼酎 200ml
水 300ml
りんご 1個
市販の穀物酢 500ml
上の画像は、下手な合成画像になってますが、最初に撮影した画像は焼酎が間違っていたので、正しい焼酎の画像を上から貼り付けました。
材料の説明1焼酎について
焼酎は、アルコールが含まれてるので、これが酢の原料になります。
麦焼酎ですから、これが酢になれば麦のお酢という事になるので、穀物酢というわけです。
ちなみに、日本酒で酢を作ると、日本酒はお米でできたお酒ですから、米酢になります。
けど、ほとんどの日本酒には酸化防止剤が入ってます。
酢酸発酵というのは、まさにアルコールが酸化する事ですから、酸化防止剤というのは、酢酸発酵防止剤という意味になります。
だから、酸化防止剤が入ってると酢作りはうまくいきません。
同じようにワインで酢を作ればワインビネガーになりますが、ワインにも酸化防止剤が入っているので、ワインでの酢作りも難しいです。
焼酎は、酸化防止剤が入ってないので、酢を作るのに適しています。
初めて酢を作るのなら、まずは焼酎で酢を作ってみるのがいいです。
材料の説明2水について
水は、アルコール濃度をちょうど良い濃度にするために使います。
アルコールが10%を超えると酢酸菌は活動できなくなるので、水で10%以下に薄めるのですが、焼酎と水と市販の酢を混ぜてアルコールが4〜5%になるようにします。
配合の仕方についてはまた後で詳しく説明します。
ちなみに、水はこだわって良い水を使っていただいても構いませんが、水道水でも大丈夫です。
材料の説明3市販の酢について
市販の酢を入れるのは、酢作りにおいて最大の有害菌である産膜性酵母の発生を抑えるためです。
産膜性酵母も酢酸菌と同じような生育条件なので、酢作りで自然発生する可能性があります。
産膜性酵母は、酢酸でなく、酢酸エチルという物質を作ります。
酢酸と名前は似てますが、性質は全く違います。
シンナーみたいな匂いがして、性質もシンナーと同じような物で、除光液にも使われる物質です。
そんなものが酢の中に発生したら、風味を損なうどころの話じゃ済みません。
せっかく作ったお酢がパーになります。
だから、産膜性酵母は絶対に発生させてはいけません。
産膜性酵母にも弱点がありまして、酸に弱いのです。
だから、酢を入れる事で、その発生を抑えることができます。
材料の説明4りんごについて
りんごには、酢酸菌が住んでいるので、これを入れることで、酢酸発酵が始まります。
りんごの皮を剥いて、適当な大きさに切ります。
ご覧のように、皮と実と種を分けます。
この種を使います。
りんごの実は食べてください。
皮にも酢酸菌が付いてますが、農薬が付いているかもしれないので、皮は捨ててください。
4.酢を作るのに適した容器
これは、3.6リットルの大きなタッパーです。
酢酸菌は表面発酵といって、液の表面に浮かんで、そこで酢酸発酵を行います。
だから、表面積が大きい方が発酵が早く行われるので、こういう容器の方が適しているのです。
これは以前、米酢を作った時の画像です。
こういった瓶でも酢酸発酵させることができます。
これは、完成した酢を保存している瓶ですが、このような、先がすぼまってる容器に満量入れると表面積がほんの少しですから、発酵が進みません。
こういう容器は酢酸発酵には向きません。
逆に、この容器は、完成した酢の品質を保つのには向いています。
5.穀物酢の仕込み方
容器に焼酎、水、酢、りんごの種を入れます。
入れる順番は問いません。
この分量で作ると市販のお酢と同じくらいの酸度のお酢が出来上がります。
蓋を軽く閉めて暖かいところに置いておきます。
6.酢酸発酵に適した温度
発酵させる温度ですが、20〜30℃あたりが最適です。
温度が低くなると発酵のスピードは遅くなりますが、菌が死ぬことはありません。
また、40℃を超えると菌が参ってきて発酵が止まります。
60℃を超えると菌が死滅します。
だから、夏ならあまり暑すぎない涼しい場所に置いておけばいいです。
冬なら暖房の効いた暖かい部屋なら発酵させることができます。
これを仕込んだのは1月で寒いので、暖房の効いた暖かい部屋の冷蔵庫の上におきました。
冷蔵庫の上は、冷蔵庫の熱を放熱させるために、基本的に物は置かないほうが良いですが、冬は、それを逆手にとって、発酵に使うことができるのです。
蓋は軽く閉めておきます。
酢酸発酵させるには、酸素が必要なので、完全に密閉すると、容器の中の酸素が枯渇して発酵が止まってしまうので、少し隙間を開けておくといいです。
かといって、隙間が大きいと、虫やゴミが入ったりすることもありますし、またアルコールや酢酸が揮発してしまう事もあるので、隙間は少しでいいです。
7.酢酸発酵が行われているかの見極め
酢酸菌は表面発酵しますから、表面に酢酸菌がコロニーを作ります。
それで、表面に酢酸菌の薄い膜ができます。
酢酸菌膜の有無で酢酸発酵が始まったかを判断します。
なので、発酵途中に液を混ぜたりすると、せっかく表面にできた膜が壊れて混ざってしまいます。
その程度で酢酸菌が死滅するわけじゃないのですが、発酵のスピードが遅くなってしまうので、なるべく混ぜたり振動を与えたりしないで、静かに置いておくのがいいです。
これは以前、米酢を作った時の酢酸菌膜です。
うっすらと白いものが液面に不規則な模様を作っています。
これは、酢酸菌膜があるので、順調に酢酸発酵が進んでると判断できます。
その時の記事↓
これは、今回の仕込んだ穀物酢ですが、どう見ても酢酸菌膜を見つける事ができません。
このタッパーみたいに表面積が大きい場合は、膜が薄くて見つからないのかも知れません、また1月で気温が低いから膜が薄いのかもしれません。
まだ研究途中なのではっきりした事は分かりません。
けど、酢酸筋膜を見つけられないからといって、酢酸発酵してないという事でもないです。
他に酢酸発酵しているか見極める方法が4つあります。
他に酢酸発酵しているか見極める4つの方法1.水滴で判断する
容器の内側に水滴がたくさん付いている事で判断できます。
これは、酢酸発酵の化学式です。
こんなの覚えなくてもいいですよ。
ただ、酢酸発酵は、アルコールと酸素が結びついて、酢酸と水になるという事だけ理解していただけたらいいです。
その、酢酸発酵によって発生した水が、水滴となって容器の内側に付くのです。
酢酸発酵してなくても、ただ単純に水分が蒸発して、それが水滴となってる場合もあるかも知れませんが、酢酸発酵が進んでる場合は、明らかに水滴の量が多いです。
だから、水滴の多さでも酢酸発酵が進んでるかを判断できます。
他に酢酸発酵しているか見極める4つの方法2.蓋の凹みで判断する
酢酸発酵は酸素が必要なので、もしタッパーの蓋をぴっちり閉めていたら、中の酸素が消費されて蓋が凹みます。
蓋が凹んだら酢酸発酵が進んでると判断できます。
けど、蓋を閉めていたら酸素が不足するんで、発酵が止まります。
酸素が不足したからといって、酢酸菌は窒息死しませんけど、酸素がなくなると発酵が止まるので蓋は緩めにしておいた方がいいです。
酢酸発酵が進んでいるかどうか分からない時に、こういった方法でも判断できるという事を知っておくだけでいいです。
他に酢酸発酵しているか見極める4つの方法3.匂いで判断する
仕込んだばかりの状態で匂いを嗅いでも、少し酒のような少し酢のような匂いがします。
酢酸発酵が進んでくると、酒の匂いが弱まり、酢の匂いがキツくなってきます。
また、匂いを嗅いで、もしシンナー臭がしたら、例の産膜性酵母が発生してると考えられます。
先ほど紹介した分量を守れば産膜性酵母は発生しませんが、もしシンナー臭がした場合は、酢を足して酸度を高くするといいです。
他に酢酸発酵しているか見極める4つの方法4.味で判断する
スプーンで少しすくって味見してみるといいです。
最初は、少しお酒の味がして酸味は弱いですけど、酢酸発酵が進むにつれて、お酒の味は弱まり、酸味が増します。
このように、いろいろな角度から発酵の進み具合を判断します。
もし1〜2週間経っても酢酸発酵が全く進んでないと思ったら
新たにりんごの種を入れるといいでしょう。
8.発酵期間について
発酵期間は、発酵させる環境によって変わります。
最適な温度と広い表面積と、静かに置いておく事、それから豊富な酸素などの条件が揃ったら、最短で10日程度でできると思います。
梅酒瓶のような容器の場合、1〜3ヶ月程度でしょう。
こんな先のすぼまった容器で発酵させると、きっと何年もかかるでしょうね。
9.酢酸発酵終了の見極め
発酵が完了したら、それ以上発酵が進まないように今度は表面積の狭い容器に移し替える必要があります。
酢酸発酵が完了して、そのまま放ったらかしにしてると、今後は酢酸が、二酸化炭素と水に分解されてしまいます。
だから酢の酸味が落ちるのです。
発酵途中に何度も様子を見ていれば、発酵の進み具合を把握できるはずです。
発酵終了が近づいて来ればだんだん酢酸菌膜が薄くなって、発酵が完了したらほとんど酢酸菌膜はなくなっています。
今回のように、酢酸菌膜が見つからなかった場合は、容器の内側に水滴の量が、発酵終了が近づくにつれて、少なくなって、発酵完了したら水滴がほとんどなくなります。
※2021年2月12日注
酢酸発酵が終了しても(酢酸+酸素)→(二酸化炭素+水)という反応が始まるので、水滴は発生します。
水滴は減りません。
だから、水滴の有無では酢酸発酵終了の見極めはできません。
また、蓋をぴっちり閉めていたら、蓋が凹むことがなくなります。
※2021年2月12日注
(酢酸+酸素)→(二酸化炭素+水)という反応では酸素を消費します。
酸素を消費するから蓋が凹むかも知れません。
けど、酸素を消費する代わりに二酸化炭素を発生させるので、蓋は凹まないかも知れません。
まだ、研究途中なのではっきりした事は分からないです。
とにかく蓋の凹みで酢酸発酵終了の見極めをするのは不確かです。
それから、匂いもモロに酢の匂いがツーンとします。
味も市販の酢と同じレベルで酸っぱくなっています。
発酵完了の見極めもいろんな角度から行うといいでしょう。
10.完成した酢の味
完成したっぽいので、スプーンですくって味で判断します。
うん、酸っぱいです。
間違いなく酢になってます。
りんごの種を取り除きます。
りんごの種は、発酵がスタートした時点で取り除いたらいいです、けど、面倒なので入れたままにしてました。
入れたままでも、りんごの酢漬けになってるので、腐ることはなさそうです。
完成した酢を密閉容器に移し替えます。
容器に満タン入れて、空気と触れる表面積を少なくすると同時に、中の空気の量を少なくして密閉します。
これで品質が保たれるでしょう。
市販の酢は、殺菌処理によって菌が死滅したり、濾過されて無菌だったりして、いずれにせよ、生きた菌がいません。
手作りの酢は、菌が生きている生の酢です。
これぞ手作りの醍醐味ですね。
酢酸菌のサプリで花粉症の改善が期待できるのだったら、この酢酸菌が生きた生の酢でも花粉症の改善が期待できるかもしれないですね。
手作り酢でも容器のまま湯煎して60℃以上に温めると殺菌できます。
そしたら保存性は高まりますけど、せっかくの手作り酢は、生でいただきたいですよね。
このように満量入れて密閉すると保存が効きます。
このまま長期間保存すれば黒酢になります。
11.酢を無限に繋いでいく方法
1リットルの酢が完成して、500mlの密閉容器に保存したので、このタッパーの中にはまだ500mlの酢が残っています。
この酢は、酢酸菌が生きている生の酢です。
ここにまたまた20%の焼酎200mlと…
水300mlを足します。
こうすると、また酢酸発酵が始まります。
こうやって、何度も酢を繋いで作っていく事ができます。
最初は市販の酢を混ぜたので、できた酢は手作り酢といっても半分は市販の酢が混ざってた訳ですが、こうやって繋いでいくと、市販の酢の割合が減っていき、純粋な手作り酢になっていきます。
手作りの酢は、旨味があって美味しいですよ。
旨いだけでなく、愛着も湧いて、味以上の美味しさがあるのです。
穀物酢の作り方については、以上です。
どなたでも理解していただけるように頑張って説明したつもりですけど、もし私の説明で分からない事があればコメントください。
可能な限りお答えしますね。
12.まとめ
- 酢(酢酸)は、アルコールを原料に酢酸菌によって作られます。
- 酢酸菌は、りんごの種酢付いている菌を使う。
- 産膜性酵母の発生を抑えるために市販の酢を混ぜる。
- 酢酸菌は表面発酵するので表面積が大きい容器で発酵させると効率良く発酵行われる。
- 酢酸発酵させる温度は、20〜30℃あたりが最適。
- 酢酸菌膜の有無で酢酸発酵が行われているかを判断する。
- 水滴・蓋の凹み・匂い・味でも酢酸発酵が行われているかを判断できる。
- 発酵期間は、発酵させる環境によって変わる。
- 酢酸発酵終了は、酢酸菌膜の有無・水滴・蓋の凹み・匂い・味で判断する。
- 完成した酢は密閉容器に満量入れて保存する。
- 何度も酢を繋いで作っていく事ができる。
今回は、お酢作り基本編で、穀物酢の作り方でしたが、お酢作りシリーズの次回は、「りんご果汁から作る、りんご酢の作り方」をご説明します。
13.動画で説明
動画ではオトコ中村自らが出演して説明しています。
今回は講義のような内容になってます。
おかげさまで1万回以上再生していただいてます。
併せてご覧ください。