パン系

酵母液の作り方(天然酵母パンその1)

2024年8月24日

酵母液

酵母液の作り方(天然酵母パンその1)

天然酵母パンを焼くには、まず酵母液というものを作らなければいけません。
自然界には至る所に酵母菌が存在してるので、それを瓶で水と一緒に培養して作ります。
非常に簡単ですから、これを読んで実践してみてください。

天然酵母パンの焼き方を全5回にてご説明します。

1.酵母液の作り方 ←当記事
2.元種法での焼き方
3.ストレート法での焼き方
4.失敗例から学ぶ
5.パンが膨らまなかった時のリカバリー法

↑これらを全て読めば天然酵母パンマイスターになれますよ。

【今回の目次】
1.天然酵母パンが焼けるまで
2.酵母菌を培養して酵母液を作る
3.酵母液を作るのに必要な道具
4.酵母液を作るのに必要な材料
5.レーズンで酵母液を作る
6.完成した酵母液
7.酵母菌が炭酸ガスを作る方法
7ー1.アルコール発酵
7ー2.呼吸
7ー3.アルコール発酵と呼吸をコントロールすると酵母液ができる
8.他の素材でも酵母液を作る
9.他の素材の酵母液のその後
9ー1.リンゴ酵母を仕込んで8日後
9ー2.ローズマリー酵母を仕込んで8日後
9ー3.いちご酵母を仕込んで6日後
10.失敗の原因を考える
11.野草で酵母液を作る
12.野草で酵母液を仕込んで2日後
13.まとめ
14.動画で説明

天然酵母パンが焼けるまで

以下、天然酵母パンが焼けるまでの流れです。

酵母液を作る(3日程度)

元種を作る(3日程度)

こねる(10分程度)

1次発酵(4時間〜3日)

2次発酵(2時間〜1日)

焼成(15分程度)

完成!

このようになっています。
酵母液を作ってから二手に分かれます。
右側に分かれるのが元種法と言って、元種を作る手間はかかりますが、発酵力が強いです。

酵母液を作ってからそのまま下に進むのがストレート法と言って、元種を作る手間はかかりませんが、発酵力が弱いので初心者にはお勧めできません。

初心者はまず元種法を試してみるといいでしょう。
いずれにせよ、まず酵母液を作ります。

酵母菌を培養して酵母液を作る


天然酵母というのは、自然界のどこでも存在します。
果物や、お花や、野菜など、基本的に植物に酵母菌が付いてます。
その酵母菌を培養し、酵母液を作ればパンを膨ませる事ができます。

酵母液を作るのに必要な道具


酵母菌を培養するのに必要な道具は、瓶です。
このような密閉できる瓶さえあれば酵母菌を培養できます。
ジャム等が入ってた瓶でいいですよ。
瓶を洗ったら酵母液を作る容器として使えます。
綺麗に洗うだけです。
消毒の必要はありません。

酵母液を作るのに必要な材料

酵母液を作るのに必要な材料は、3つです。

  • 植物
  • 水(水道水で可)
  • 砂糖

たったこれだけでできます。

植物というのは何でもいいです。
果物やお花、または植物なら葉でも茎でも、植物に酵母菌が付いてます。
その植物に付いてる酵母菌を育てます。
育てる方法は今から説明します。

よく使われるのがリンゴやレーズンです。
リンゴを使えばリンゴ酵母。
レーズンを使えばレーズン酵母です。

レーズンで酵母液を作る

【レーズン酵母液の材料】
レーズン 大さじ1程度
水(水道水で可) 瓶の満タンより若干少なめ
砂糖 小さじ1程度

レーズンはオイルコーティングされてないものをお使いください。
画像のようなオーガニックがおすすめです。
自然食品店で入手できます。


瓶にレーズン・水・砂糖を入れます。
水は画像のように少しだけ隙間を残してほぼ満タン入れます。
水道水で大丈夫です。
砂糖は、酵母菌の餌になります。


蓋をして、瓶を振って砂糖を溶かします。


このまま放置します。

これを仕込んだのは2024年4月17日でした。
私のお家は京都ですから、この頃の京都の気温は、最高気温が20〜25℃くらい、最低気温が15℃くらいです。
この環境で6日間放置した4月23日に酵母液が完成しました。

温度によって、酵母菌の育つスピードが変わります。
夏なら1日で育つ事もありますし、冬なら2週間かかかる事もあります。

完成した酵母液


見た目だけでは酵母液が完成してるのかどうか分かりにくいです。
蓋を開けるとよく分かります。


蓋を開けるとシュワシュワーと溢れる寸前まで気泡が出ました。
これは元気に酵母菌が育った証拠です。

このように蓋を開けたら酵母液が完成したかどうかがわかります。
毎日蓋を開けて様子を見てみるといいです。

酵母菌が作った炭酸ガスが、瓶の蓋を開けて圧力が下がった事で気泡になったのです。

酵母菌は糖分から炭酸ガスを作り出すのです。

この液体を酵母液と呼びます。

このように元気な酵母液ができたら天然酵母パン作りは勝ったも同然です。

酵母菌が炭酸ガスを作る方法

話は少し横道にそれますが、天然酵母パンを作るうえで知っておいて損はない情報です。
酵母菌が糖分(ブドウ糖)から炭酸ガスを作り出す方法は「アルコール発酵」と「呼吸」の2種類あります。

アルコール発酵

ますは、アルコール発酵について説明します。

こんな化学式は覚えなくて良いですよ。
化学式を書いた方が説得力が増すのでそうしただけです。

要するに、酵母菌が「ブドウ糖1分子」から「アルコール2分子」と「二酸化炭素1分子」を作り出します。
そして2ATPというエネルギーを生み出します。

あ、理科に弱い方のため念のために言いますが、炭酸ガスと二酸化炭素は同じですよ。
あとCO2(シーオーツー)とも言います。
「炭酸ガス」「二酸化炭素」「CO2」これら3つの言葉は同じ意味です。

理科に弱い方はとにかく「酵母菌が糖分からアルコールと二酸化炭素を作り出す」という事だけ分かれば良いです。
酵母菌も生きていくにはエネルギーが必要だから、エネルギーを得るためにアルコール発酵を行うのです。
決して酵母菌がお酒を飲みたいからアルコール発酵をしてるわけではありません。

呼吸


化学式は覚えなくて良いですよ。
酵母菌が「ブドウ糖1分子」と「水6分子」と「酸素6分子」から「二酸化炭素6分子」と「水12分子」を作り出します。
そして34ATPというエネルギーを生み出します。

呼吸は酵母菌だけでなく、人間も行っています。
地球上のほぼ全ての生物が呼吸でエネルギーを得てます。
それによって二酸化炭素が発生するのです。

アルコール発酵と呼吸をコントロールすると酵母液ができる

酵母液を作る時に瓶の蓋を閉めますが、それは酸素の供給を止めるためです。
酸素を止めると呼吸できなくなります。
酵母菌は酸素が無くてもアルコール発酵でエネルギーを生み出すことができるので、生きていけます。

逆に、食品を腐敗させるカビは、酸素が必要です。
酸素が必要なカビは、瓶の蓋を閉めると繁殖できなくなります。
だから瓶の蓋を閉めるのです。
乳酸菌も酸素無しで生きていけるけど、乳酸菌は食品を腐敗させません。
むしろ善玉菌です。
そして乳酸菌と酵母菌は共存できます。
このように、瓶の蓋を閉める事で、酵母菌が繁殖するために必要な条件が整うのです。

他の素材でも酵母液を作る

酵母液の作り方をさまざまな角度から説明するために、以下3つの素材で酵母液を仕込んでみました。

  • リンゴ
  • ローズマリー
  • イチゴ


【画像左】りんご酵母
リンゴの皮をむいてを適当に切って瓶に入れます。
水と砂糖は最初に説明したレーズン酵母と同じ要領で入れ、瓶の蓋を閉めます。
すでに説明した通りです。

リンゴは無農薬なら皮ごと入れるといいです。

【画像右】ローズマリー酵母
瓶にローズマリーを入れて、水、砂糖、蓋をして、瓶を振って砂糖を溶かします。
全て同じ要領です。

【画像中央】イチゴ酵母
イチゴをそのまま洗って使います。
これも同じ要領です。

他の素材の酵母液のその後

このように仕込みましたけど、これは失敗例として紹介しなければいけなくなりました。

ちなみに、これらは全て4月に仕込んだものです。
温度によって、酵母菌の育つスピードが変わるので4月に仕込みましたという情報は必須なのです。
夏なら1日で育つ事もありますし、冬なら2週間かかかる事もあります。

リンゴ酵母を仕込んで8日後


蓋を開けて様子を見てみましたが、ウンともスンともいってません。
酵母菌が活動していれば炭酸ガスが発生してシュワシュワ炭酸水になっているはずなのです。
ウンともスンともいってないという事は酵母菌が育ってない証拠です。
4月に8日も置いてこの状態ならもうダメです。

ローズマリー酵母を仕込んで8日後


蓋を開けて様子を見てみますが、ウンともスンともいってません。


砂糖は酵母菌のエサになるので、砂糖を足せば酵母菌が元気になるのではないかと期待して、足しました。
リンゴやイチゴなど果物の場合は、砂糖以外にも素材にも糖分が含まれてるのに対し、ローズマリーに含まれてる糖分はほぼゼロなので、砂糖を追加してみたのです。

その後のローズマリー酵母の記録はありません。
記録は無いですが、これを捨てた記憶はあります。
要するにダメだったという事です。

イチゴ酵母を仕込んで6日後


少しプクプクと気泡が出てます。
しかし、あまり元気ではありません。
そしてイチゴのいい匂いが広がります。
これは全くの失敗というわけではありませんが、成功というわけでもありません。

というわけで、イマイチな結果でした。

失敗の原因を考える

これはもしかしたら、農薬等が影響してるのかもしれません。
しかし、過去に農薬を使ったリンゴでもバッチリ成功した例もあります。
何度も成功した事があります。
今回撮影用に仕込んだリンゴ酵母は失敗しました。

リンゴは、酵母液を起こすのに最も基本的で成功率が高いので、その例を示そうと思ったのです。
実は、撮影用にリンゴ酵母を3回仕込んで全て失敗したのです。
リンゴの失敗の原因は分からず終いでしたが、それでも無農薬のリンゴなら確実に成功率は上がります。

ローズマリーも八百屋さんで買ってきたものだったので、きっと農薬を使用してると思います。
イチゴも然り。

最初に紹介したレーズン酵母は、元気に泡立ちました。
あのレーズンはオーガニックでした。
オーガニックが上手くできて、それ以外はイマイチだったから、無農薬の素材を使うべきかもしれません。

その事を証明するために、無農薬の植物を使ってまた酵母液を作ってみようと思います。

無農薬の植物で、私のおすすめがあります。

何だと思いますか?

私のブログの熱心な読者なら、もうお分かりかと思います。

私のおすすめの無農薬の植物といえば、そうです。

野草です!

野草で酵母液を作る


京都の鴨川にやってきました。
これはセイタカアワダチソウです。
これを収穫しました。


これは、ミントです。
ミントも収穫しました。


まずは、水洗いします。
虫や泥が付いてますからちゃんと洗います。

洗ったら付着している酵母菌が流されるのではないか?その心配はありません。
水で洗った程度ではノーダメージです。


左がセイタカアワダチソウ。
右がミントです。

瓶に野草を押し込んで、水と砂糖を入れ、蓋をして瓶を振って砂糖を溶かします。

最初に説明したレーズン酵母と同じ要領です。

このまま置いておきます。

ちなみにこれを仕込んだのは6月16日でした。
最高気温が30℃を超えたりする季節です。

野草で酵母液を仕込んで2日後


まずはセイタカアワダチソウ酵母を見てみましょう。
写真ではわかりにくですが、もうすでにシュワシュワーと瓶の蓋を開ける前から気泡が出てます。


蓋を開けてみると、溢れるほどではありませんが、シュワシュワしています。
元気な酵母液ができました。


続いて、ミント酵母です。
これも、蓋を開ける前からシュワシュワ感があります。


蓋を開けてみると、シュワシュワーと気泡が出ました。
これも元気な酵母液になってます。

6月中旬だったので、2日で酵母液ができました。

最初に紹介したレーズン酵母は4月だったから6日かかりました。
気温が違うとここまで変わります。

酵母液が完成してるかどうかは、蓋を開けてみないと分からないので、毎日瓶の蓋を開けて、様子を見るといいですよ。

では、次回はこれを使って実際にパンを焼く方法をご説明します。
次回は「元種法での焼き方」です。

天然酵母パンの焼き方を全5回にてご説明します。

1.酵母液の作り方 ←当記事
2.元種法での焼き方
3.ストレート法での焼き方
4.失敗例から学ぶ
5.パンが膨らまなかった時のリカバリー法

まとめ

  • 天然酵母が自然界のどこでも存在する。
  • 基本的に植物に酵母菌が付着している。
  • 酵母菌を培養するのに必要な道具は瓶。
  • 酵母液を作るのに必要な材料は植物・水・砂糖の3つ。
  • 酵母液が完成するとシュワシュワ気泡が出る。
  • 酵母菌はアルコール発酵と呼吸の2種類の方法で炭酸ガスを作る。
  • 気温によって酵母液が出来るまでの時間が変わる。
  • 無農薬の植物がおすすめ。

動画で説明

動画では私が実演しております。
動画でしか伝わらない事もあるので、特に酵母液がシュワシュワーとなる様子は動画見て欲しいです。
なので、併せてご覧ください。

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このブログを書いてる人

オトコ中村
京都在住 40代 料理を通じて皆が健康で幸せになればいいなと思っている。
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