天然ホップでビールを作る
ホップはビールに苦味と香りを付けるハーブです。
当然ですが、ホップ農家さんが栽培したものがビールに使われています。
そのホップに野生種というものがあるのです。
何年もそれを探していたのですが、とうとう見つけました。
それを使ってビールを作るレポートです。
【目次】
1.天然ホップとの出会い
2.収穫したホップを調べてみた
3.カナムグラの味と香りは?
4.ビール原料を仕入れる
5.カナムグラでビールを作る
5ー1.まずは糖化
5ー2.濾過
5ー3.煮沸
5ー4.冷却
5ー5.イーストを加え1次発酵
5ー6.17日後
5ー7.瓶詰め
5ー8.2次発酵および熟成
5ー9.1ヶ月後
6.カナムグラのビールを試飲
7.ホップの話あれこれ
8.まとめ
9.動画で説明
天然ホップとの出会い
2023年11月4日の京都の鴨川です。
ここの河川敷に生えてるこれ、これですよ。
これはどう見てもホップですよ。
ここら辺一面に群生してます。
いつも行く場所ですが、初めて発見しました。
いつもは、ススキなど他の野草が鬱蒼と生い茂っているので目立たなかったのだろうと思います。
今年2023年は、行政による草刈りが10月中に行われたようで、それでススキなどが刈られて、このホップが躍り出てきたものだと思います。
野草は、草刈りなどのタイミングによっても生え方が変わるので、毎年同じとは限らないのですね。
だから、野草観察していても毎回発見があります。
また、10年単位で考えると、外来種とかの影響で植生が変わったりしますから、これまた発見がありますよ。
こんな赤い奴もありました。
天然のホップを発見しただけでもテンションが上がったのに、この赤いホップは新種かもしれないと思いテ更にンション上がりました!
新種だったら発見者が名前を付ける事ができます。
「オトコ中村」って名前を付けようかとまで考えました。
ホップは雌雄異株(しゆういしゅ)と言い、雄の花を付ける株と雌の花を付ける株が別なのです。
画像のような雄花も近くに生えています。
これらを収穫します。
ちょっとトゲがあります。
怪我するほどのトゲではありませんが、一応気をつけながら摘んでいきます。
これだけ収穫しました。
収穫したホップを調べてみた
後でよく調べてみると、これはホップではなくて、ホップの仲間のカナムグラという野草だという事がわかりました。
さらに雄花は秋の花粉症の原因ともなっているみたいです。
新種のホップではなかったという事です。
ホップは、アサ科のカラハナソウ属の植物です。
カナムグラも、アサ科のカラハナソウ属の植物です。
だから近親種ですよ。
見た目も似てますからね。
近親種ならば、カナムグラでビールを作ってみても面白いのではないでしょうか。
ちなみに、本物のホップの野生種でセイヨウカラハナソウという植物が日本国内に自生しているみたいです。
私はセイヨウカラハナソウをまだ見たことがありません。
これについては、引き続き探し続けていきます。
あそこに生えてたよとか情報あれば教えてください。
私は京都在住なので、「北海道で生えてたよ」とか教えてもらってもすぐには採りにいけませんが、そういう情報でも歓迎です。
カナムグラの味と香りは?
とりあえず、カナムグラがどんな味なのか、ハーブティーとして飲んでみようと思います。
ポットにカナムグラを入れて、熱湯を注ぎます。
5分くらい置いてカップに注ぎました。
黄色いお茶になってますね。
これの味は、全く苦味がありませんでした。
ただの草の香りだけでした。
ホップはご存じのようにビールの苦味成分を含んでいます。
だから、ホップをこのようにハーブティーとして飲むと苦いです。
しかし、これには苦味がありませんでした。
これは国産のカスケード種のホップを乾燥させたものです。
これをバラしてみると。
ご覧のように黄色というかオレンジ色の粉が出てきます。
この粉は「ルプリン」と言って、この粉が苦味成分そのものです。
ホップにはこの粉があります。
このカナムグラを切ってみても、黄色い粉は出てきません。
カナムグラには苦味は無いです。
このように味と視覚で苦味が無いと判断しました。
判断基準は味だけで十分ですけどね。
視覚からも判断しました。
苦味は無いですが、これでビールを作ったらどんな味になるのか、やはり興味があります。
ハーブティーとして飲んだら草の香りですけど、ビールになるとまた香りの印象が変わります。
画像引用元:https://yonasato.com
例えば、よなよなエールは、華やかなグレープフルーツのような柑橘系の香りがします。
あの香りはホップの香りですよ。
もちろんグレープフルーツは使っていません。
カスケード種というホップを使ってるのですが、あの香りはカスケード種特有の香りです。
しかし、生のカスケードの匂いを嗅いでもあんな香りはしません。
ビールとして完成すると、香りが変化するのです。
だから、野草のカナムグラでビールを作ってみたら、すっごい良い香りに変化するかもしれません。
逆に変な香りになるかもしれません。
それは実際に作ってみないと分かりません。
という事で、実際にビールを作ってみましょう。
ビール原料を仕入れる
ビールは、大麦麦芽でできてますから、大麦麦芽を仕入れます。
↑楽天にビール原料を専門に扱ってるブリューランドというお店があります。
このお店は、私が知る限り日本では唯一無二のお店です。
ここでドイツ産のミュンヘンという麦芽を注文しました。
麦芽が届きました。
このように粉砕された物を注文しました。
籾殻ごと粉砕されています。
では、これと野草のカナムグラでビールを作ります。
カナムグラでビールを作る
【ビールの材料】今回作った2リットル分
麦芽 100g
水 2リットル
カナムグラ 78g
エールイースト 3g
水 100ml
砂糖 20g
日本では、個人がアルコール1%以上のお酒を作ってはいけません。
だから、この材料はアルコール1%未満になるようにしています。
材料の麦芽の量を5倍にすれば、計算上は、アルコール5%のビールになります。
6倍にすれば、少しアルコールの高めの6%のビールになります。
7倍にすれば、さらにアルコール分高めの7%のビールになります。
これは計算上の話ですよ。
日本では実際にやってはいけませんよ。
くれぐれも、アルコール1%未満で作ってくださいね。
まずは糖化
鍋に、麦芽と水を入れ火にかけ、混ぜながら温めていきます。
50℃くらいでタンパク質分解酵素が活発に働くので、50℃を30分くらいキープするという方法があります。
これをタンパク休止と言います。
タンパク休止を行うと、ビールに含まれる余分なタンパク質が分解されるので、クリアな味になります。
クリアである事がいい事とは限らないので、タンパク休止は省略します。
ラガービールのようなビールを作る場合は、タンパク休止を行うといいですよ。
62℃以上で糖化酵素が活発に働きます。
62℃以上70℃以下の温度を30分キープします。
これが糖化です。
大麦のデンプンをブドウ糖に分解するのです。
30分経ちました。
少しスプーンですくって味見して甘くなっているのを確認します。
甘くなければ甘くなるまで62℃以上70℃以下の温度をキープします。
甘くなれば糖化は完了です。
糖化が完了したら、さらに加熱して77℃以上を5分キープします。
これを酵素失活化と言います。
酵素失活化も省略可能です。
濾過
ザルで、麦汁を濾します。
ザルを上げます。
下に落ちた麦汁が、これが1番搾り麦汁です。
搾りかすに水を足して、さらに絞ると2番搾りになりますが、今回は1番搾りだけを使います。
煮沸
1番しぼり麦汁を鍋に入れて火にかけ、沸騰させます。
5分くらい沸騰させたところで、カナムグラを投入します。
さらに2分くら沸騰させ、火を止めました。
冷却
煮沸した麦汁を氷で冷やします。
40℃以下になるまで冷やします。
イーストを加え1次発酵
2リットルのペットボトルの上に漏斗とザルを乗せて、カナムグラが入らないように注ぎます。
最後にカナムグラはギュッと搾ります。
エールイーストです。
これも先ほど紹介した楽天のショップで買いました。
少し入れます。3g程度です。
蓋を軽く乗せます。
発酵したら炭酸ガスが発生するので、蓋は軽く乗せる程度でいいです。
蓋をギュッと閉めると、ペットボトルがパンパンになります。
蓋を載せるだけで、ガスの逃げ道を作っておきます。
だからくれぐれもペットボトルを倒さないように注意が必要です。
このまま暗い場所に置いておきます。
これが1次発酵です。
夏なら発酵が活発で、ブクブクと吹きこぼれる可能性もあるので、ペットボトルの下に受け皿でも敷いておくといいです。
夏でなければ吹きこぼれる心配はありません。
17日後
1次発酵が完了しました。
発酵前と見比べると、不純物が沈澱してクリアな上澄みができてるのが分かります。
暖かい季節だったら1次発酵は3日くらいで完了します。
今回は11月だったので17日もかかりました。
正確には2023年11月8日〜25日まで発酵させました。
瓶詰め
炭酸が入ってたペットボトルを用意します。
水と砂糖も用意します。
この砂糖はビールに炭酸を発生させるためのものです。
水に砂糖を溶かして、炭酸のペットボトルに均等に入れていきます。
シリコンチューブです。
2リットルのペットボトルにチューブを入れて、サイフォンの原理で、上澄みを炭酸のペットボトルに均等に入れていきます。
本体は後わずかになってきました。
この沈殿したオリの部分は美味しくないので、入れないようにします。
上澄みが無くなれば、ボトル詰めは終了です。
炭酸のペットボトルの蓋をギュッと閉めます。
今度は炭酸ガスを閉じ込めて、ビールを炭酸にしなければいけませんから、蓋はちゃんと閉じます。
2次発酵および熟成
このまま暗い場所で3週間以上置いておきます。
これは撮影のために明るい場所に置いてますけど、この撮影が終わったら押し入れに入れました。
最低でも3週間は置いておきます。
ここで我慢できずに早く飲んでも美味しく無いですよ。
1ヶ月経過
澄んだ液体になりました。
底にはオリが沈んでます。
これは酵母菌の集まりです。
ペットボトルが炭酸の圧力で硬くなってます。
ビールが順調に育っている証拠です。
カナムグラのビールを試飲
ご覧のように、注いでも泡が立ちませんでした。
微炭酸のビールでした。
味は、まず、飲んだ後に麦芽の香りが感じられます。
ちゃんとビールの味はしてます。
そして、少し、爽やかな酸味もあります。
ホップの香りですが、なんと、リンゴような甘い香りがします。
甘味はありませんが、甘いリンゴのような香りがします。
もちろん苦味もありません。
甘味の無い微炭酸アップルタイザーのような味です。
これは予想外というか、最初から味を予想してませんでしたけど、思ってもみない味に仕上がりました。
妻にも感想を聞いてみました。
シードルのようなりんごの香りする。
炭酸が 微発砲で酸味もある。
りんごのお酒に酢が入った感じ
りんご酢のお酒作ったんじゃない?
原料は、主に麦芽とカナムグラで、もちろんリンゴは使ってないよ。
よくクラフトビール等でグレープフルーツの風味がするのは、グレープフルーツ使ってるの?
あのグレープフルーツの香りはカスケード種のホップの香り。
グレープフルーツは使ってないよ。
同じように今回のビールもホップ(カナムグラ)がリンゴの香りに変化した。
あ、そうなんだ。
面白いね。
じゃあこれは 、りんごの風味のするビールだって言ったら絶対いいよ。
ホップの話あれこれ
ホップの自家栽培に憧れて、Amazonでホップの苗を買って、ベランダでプランター栽培をした事があります。
ホップは蔓性の植物だから、緑のカーテンを作る事も期待できます。
緑のカーテンで夏を涼しく過ごし、おまけにホップまで収穫できるなんで夢のような話だと思いませんか?
また、ホップは宿根草で、秋に地上部は枯れますが、根が生きていて、春にまた芽が出てきます。
そのホップの芽が高級食材なのです。
なんとベルギーではホップの新芽1kgで1400ドルの値が付くそうです。
1ドル140円で換算すれば1kgで196,000円という計算になります。
↓そんな事を書いた過去記事があります↓
まとめ
- 京都の鴨川にカナムグラが生えている。
- カナムグラはホップの近親種。
- セイヨウカラハナソウというホップの野生種がある。
- カナムグラには苦味は無い。
- よなよなエールのグレープフルーツのようなの香りはカスケード種のホップの香り。
- 生のカスケードホップの匂いを嗅いでもグレープフルーツの香りしない。
- カナムグラのビールはリンゴの香りがした。
- カナムグラの香りはビールにするとリンゴの香りに変化する。
動画で説明
動画では私が出演して熱く語っています。
動画でしか伝わならい事もあるので、併せてご覧ください。