今回は、2016年に初めて米酢作りを成功させた記事です。
初めての挑戦ですから、試行錯誤をしながら作ってる過程を楽しんでいただければと思います。
ここでも米酢の作り方について解説してますが、2016年当時の知識なので、間違ってはいませんが、そこから5年研鑽して2021年にもっと詳しく書いた記事があるので、米酢の作り方を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
0.酢は発酵食品
1.米酢の作り方について
2.酢の原料となる酒の作り方
3.酢の仕込み(2リットルの瓶で仕込む場合)
4.米酢の完成
5.米酢を継続して仕込む
6.米酢作りのまとめ
7.自家製米酢を使って料理を作る
7-2.米酢ドレッシング
7-3.酢のお湯割り
7-4.寿司酢の作り方
7-5.マヨネーズを作る
酢は発酵食品
酢は、アルコールを酢酸発酵させて作ります。
また、酢の原料となるアルコールは、糖分をアルコール発酵させて作ります。
ですから酢は、発酵に発酵を重ねた発酵食品なのです。
売っている酢は、熱処理されているために菌は死んでますが、どれも発酵に発酵を重ねて作られたものです。
発酵食品が大好きな私は、これまで酢作りに挑戦した事はありましたが、あまりパッとした成果は出ていません。
ナタデココを作ろうとして、間違ってココナッツ酢が出来上がった事がありますが、酢を作ろうとしてまともな酢を作った事はありません。
酢作りの方法は、分からない事が多かったのです。
それを調べようとしても、あまり詳しい資料が出回っていないのです。
「酢の作り方」なんてキーワードでググッてみても、実際に自分で作るのに役立つ情報には、ほとんどめぐり合えません。
これが、例えば「味噌の作り方」でググッたら、いくらでも情報が出てきますよ。
しかし、なぜか酢の情報は少ないのです。
本屋にも立ち寄り、いろいろ読んでみましたが、酢ができるまでの理論的な事が書かれてるものはあるのですが、手作りするための情報は、ほとんど見つかりませんでした。
そんなふうに困っていたある日、とうとうこんな本に出会いました。
私とこの本との出合いは、例えて言うなら男女が運命の出会いをしたかの如く、「ずっと前からこんな本を探していたのだ~!」という衝撃的なものでした。
タイトルどおり、誰でもできる酢の作り方が、分かりやすく丁寧に書いてあります。
この1冊のおかげで、私がずっと疑問だった事が、全て解決されました。
オトコ中村の推薦図書とさせていただきます。
この本を読んだ結果、酢はいろいろありますが、日本人の主食である米を使った米酢を作ってみようと思いました。
米酢は「よねず」とも「こめず」とも「こめす」とも読めるみたいです。
読み方よりも作り方ですよね。
米酢の作り方について
米酢は、当たり前の事ですが、米から作ります。
2.日本酒を原料に酢を作る
大まかに、このような手順で米酢を作ります。
米250gで、酸度4~5%の酢を1リットル作る事ができます。
JAS規格では、米酢1リットルにつき米40g以上を使えば米酢と表記できるので、米を40gさえ使えばあとは安い原材料を混ぜても良いです。
例えば、ミツカン米酢の原材料をみると、米・アルコールと表記されています。
このアルコールとは、おそらく砂糖を精製する時に出る廃棄糖をアルコール発酵させたものでしょう。
安い酢は、そういった原材料で作られています。
しかし、ここで安い酢の事を悪く言うつもりはありません。
ただ、安い酢はそういう物なのだという事が言いたかっただけです。
ミツカンの米酢は安くて手に入りやすいので消費者にとってはありがたい商品であり、私も買ってます。
ちなみに米100%の酢は、純米酢と表記されていると思います。
余談になりますが、リンゴ酢は、リンゴ果汁1リットルで、おおよそですが酸度4~5%のリンゴ酢を1リットルを作る事ができます。
JAS規格では、リンゴ酢1リットルにつきリンゴ果汁300g以上を使えばリンゴ酢と表記できるので、あとはアルコールなど、安い材料を混ぜても良いです。
リンゴ100%の酢に関しては、純リンゴ酢など表記されてると思います。
原材料を見て確認しましょう。
さて、本題に戻ります。
米酢は、まず、米を原料にして日本酒を作り、その日本酒を原料にして酢を作ります。
日本酒を仕込む時、本来なら米を蒸すのですが、我が家では蒸すのが困難なので、硬めに炊きます。
米を炊いても蒸しても、ちゃんと酒になりますが、蒸せる鍋があるなら蒸した方が良いと思います。
酢の原料となる酒の作り方
米麹 1kg
米 1升
米を炊く用の水 1リットル
仕込み水 2リットル
ドライイースト 1g
※米麹の作り方は 自宅消費用の簡易版、鍋一つで作れる米麹(こめこうじ)の作り方。これで甘酒も作れます。 をご覧ください。
まず、米を洗って一晩水に漬けて、十分に水を吸わせてから炊いて、冷まします。
仕込む容器は、蓋ができる容器なら何でも良いです。
これは漬物用の10リットル樽です。
容器に仕込み水を入れます。
米麹をほぐして入れ、冷ました米を入れます。
ドライイーストを入れ、混ぜます。
ドライイーストを入れなくても、天然酵母が勝手に働いて発酵を始めると思いますが、確実に発酵を進めるために入れました。
そして、蓋をして暖房の効いた暖かい部屋に置いておきます。
暖かい部屋だと、1週間くらいで完成します。
酒蔵など伝統的な製法では、暖房など効かせずに1ヶ月くらいかけて発酵させます。
米麹が作り出した酵素が、米のデンプンを糖に変え、その糖を酵母菌(イースト)がアルコールと二酸化炭素に変えます。
また、米に含まれているタンパク質も酵素によってアミノ酸に分解されます。
このアミノ酸が、酢に旨味を与えてくれます。
発酵させる容器の蓋をしっかり閉めると、特にガラス瓶などの場合、蓋をしっかり閉めると、発酵によって発生した二酸化炭素の圧力で瓶が破裂する恐れがあるので、蓋は軽く閉めるようにしましょう。
漬物樽の蓋は、載せておくだけなので、破裂の心配はありません。
仕込から3日後。
シュワシュワーと音をたてて元気に発酵しています。
二酸化炭素の気泡が沸き立って、米粒が浮いています。
この浮いているものを粕蓋(かすぶた)と呼びます。
粕蓋の空気に触れている部分に、雑菌が繁殖する可能性があるので、たまに混ぜて沈めてやります。
発酵させている間、粕蓋を混ぜて沈める以外は、特に何もする必要はありません。
基本的に放置です。
仕込みから10日後。
発酵の勢いが弱まってきました。
これで発酵完了とします。
発酵が完了した酒を布で濾します。
濾した酒は白く濁ってますが、数日置いておくと、白濁成分は沈殿します。
濁ったままでも酢にはなりますが、きれいな酢にしたいので、このまま置いて沈殿させます。
数日経ちました。
この上澄みを使います。
これでいよいよ酢の原料となる酒ができました。
それでは、酢を仕込みましょう。
酢の仕込み(2リットルの瓶で仕込む場合)
酒 600ml
水 800ml
市販の酢 500ml
種酢 100ml
※市販の酢を混ぜる理由は、酢作りにおいて有害菌となる産膜性酵母の発生を防ぐ為です。
産膜性酵母は、酢酸菌と生育条件が非常に似ているために、発生しやすく、また酢酸発酵を著しく阻害するので、絶対に発生させてはいけません。
ただ産膜性酵母は、酢酸菌と違い、酸性に弱い為、仕込み時に酢を入れて、酸性にしてやる事によって発生を防ぐ事ができます。
伝統的な酢作りをしているお酢屋さんでもそうしています。
こうして出来た酢は、市販の酢が3割近く混ざっている計算になり、自家製と言えど、自家製の度合いは7割くらいで、ちょっと物足りない感じがします。
しかし、また再び酢を仕込む時に、自家製酢を加えて仕込めば、完成した酢の自家製度合いは高まり、それを繰り返せば、完全に自家製と言えるものになるでしょう。
※種酢というのは、酢酸菌が生きた酢の事です。
これによって酢酸発酵を促します。
市販の酢は、熱処理されたり濾過されて無菌であるために、種酢にはなりません。
菌が生きている酢なんて、私は売っているところを見た事ありませんので、入手は極めて困難だと思います。
種酢を入れなくても、空気中の酢酸菌が繁殖してくれるでしょうし、また柿などの果物を入れると、果物についている酢酸菌が繁殖してくれる事もあるでしょうから、無くても大丈夫だと思います。
我が家には、偶然にもこのような種酢がありました。
これはナタデココを作ろうとして間違って出来たココナッツ酢です。
※ココナッツ酢について詳しくは ナタデココを作る をご覧ください。
熟成とともに色が黒くなり、ココナッツ黒酢になりましたが、酢酸菌が生きている正真正銘の種酢です。
これは、空気中の酢酸菌が繁殖したのか、リンゴの種から酢酸菌が繁殖したのか、どちらかは分かりませんが、そのいずれかです。
とにかく、ありがたく、これを使わせていただきます。
2リットルの瓶に、全ての材料を入れました。
酢酸発酵には、酸素が必要なので、瓶の蓋をしっかり閉めてはいけません。
少し開けておくと良いのですが、埃や虫が入らないように、生ゴミ用の水切りネットをかぶせました。
この上に、少し隙間が開くように蓋を乗せます。
酢酸菌が活発に活動する温度は、20~30℃くらいなので、冬でも比較的暖かい冷蔵庫の上に置きました。
発酵期間の目安は1~3ヶ月です。
仕込みから4日経過。
これがもし酒の発酵なら、シュワシュワーと音をたてて発酵するので分かりやすいですが、酢酸発酵は、ウンともスンとも言わないので、よく分かりません。
画像では見にくいですが、液面にうっすらと膜ができました。
この膜が酢酸菌の集まりです。
酢酸菌は、このように液面に浮いて酸素とアルコールを消費しながら発酵します。
酢酸発酵がスムーズに行われているかの判断は、この膜と臭いを見ることです。
間違って有害菌である産膜性酵母が膜を張った場合は、もっと白くて粉っぽい膜になり、シンナー臭がします。
こういった特徴から、酢酸発酵させている間は、液体を混ぜたり振動を与えたりすると、酢酸菌が沈んだりするので静置しておいた方が良いです。
逆に、産膜性酵母が発生した場合は、混ぜたり振動を与え、それを沈め、酢を追加して再発生を防ぎます。
仕込みから2週間経過。
膜が張り、ツーンと酢の臭いがします。
順調に発酵が進んでいる証拠です。
スプーンですくって味見をしてみましたが、ゲホッと咽るほど酸っぱかったです。
ほとんど酢として完成してると思いますが、まだ完成ではありません。
酢酸発酵が完了したかどうかの見極めは、酢酸菌膜が薄くなり、消滅する事で判断しますが、何しろ初めての事なので、まだよく分かりません。
仕込みから3週間経過。
ツーンと酢の臭い。
繰り返しになりますが、酢酸発酵が完了したかどうかの見極めは、酢酸菌膜が薄くなり、消滅する事で判断します。
画像では分かり難いですが、酢酸菌膜は消滅していませんが薄くなっています。
よし!これで発酵完了という事にしよう。
米酢の完成
瓶に入れて完成です。
これは菌が生きている生の酢です。
こんなの何処にも売ってませんよ。
それでは、試飲してみます。
グビッ!!
酸っぱ~!
喉が焼けるような感覚。
まさしく酢です。
酸っぱすぎて、ストレートで飲んでも旨味があるとか何とか感じる余裕はありませんでした。
ストレートで飲むにはキツイです。
妻にも飲ませましたが、酸っぱいと言って、舐める程度にしか飲んでくれませんでした。
しかし、ストレートで飲むにはキツイという事は、しっかりとした酢が完成したと言う事です。
酸度は、飲んだ感覚から察するに4~5%でしょう。
この酸度なら市販の酢と同じです。
米酢を継続して仕込む
ところで、完成した酢の1/3くらいは、再び仕込むための種酢として残しておきます。
ここに、酒と水を同じ割合で入れると、また酢酸発酵が始まります。
種酢1、酒1、水1くらいの割合で混ぜました。
これで、また1ヶ月くらいすると酢が完成するでしょう。
こうする事で、継続して酢を仕込み続ける事ができます。
米酢作りのまとめ
- 日本酒は、米麹が作り出した酵素が、米のデンプンを糖に変え、その糖を酵母菌(イースト)がアルコールと二酸化炭素に変え出来る。
- 米に含まれているタンパク質も酵素によってアミノ酸に分解され、アミノ酸が酢に旨味を与えてくれる。
- 日本酒を発酵させる容器の蓋をしっかり閉めると、特にガラス瓶などの場合、蓋をしっかり閉めると、発酵によって発生した二酸化炭素の圧力で瓶が破裂する恐れがあるので、蓋は軽く閉める。
- 酢を仕込む時に市販の酢を混ぜる理由は、酢作りにおいて有害菌となる産膜性酵母の発生を防ぐ為。
- 産膜性酵母は、酢酸菌と生育条件が非常に似ているために、発生しやすく、また酢酸発酵を著しく阻害するので、絶対に発生させてはならない。
- 産膜性酵母は、酢酸菌と違い、酸性に弱い為、仕込み時に酢を入れて、酸性にしてやる事によって発生を防ぐ事ができる。
- 酢酸発酵には、酸素が必要なので、瓶の蓋をしっかり閉めてはいけない。蓋は少し開けておくと良いが、埃や虫が入らないように、生ゴミ用の水切りネットをかぶせると良い。
- 酢酸菌が活発に活動する温度は、20~30℃くらいなので、冬なら暖房の効いた部屋の中でも比較的暖かい冷蔵庫の上に置くと良い。
- 酢の発酵期間の目安は、1~3ヶ月。
- 酢酸菌は、液面に浮いて酸素とアルコールを消費しながら発酵する。
- 間違って有害菌である産膜性酵母が膜を張った場合は、酢酸菌膜より白くて粉っぽい膜になり、シンナー臭がする。
- 産膜性酵母が発生した場合は、混ぜたり振動を与え、それを沈め、酢を追加して再発生を防ぐ。
- 酢酸発酵が完了したかどうかの見極めは、酢酸菌膜が薄くなり、消滅する事で判断する。
- 完成した酢の1/3くらいは次の仕込みのために残しておくと良い。
では次に、完成した酢を使って料理を作ってみましょう。
酢キャベツや、酢玉ねぎなんかもお勧めです。
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自家製米酢を使って料理を作る
まず、自家製米酢を使って、米酢の味を活かすドレッシングを作ってみました。
米酢ドレッシング
米酢 100g
醤油 100g
サラダ油 80g
ごま油 20g
ゴマ 10g
砂糖 5g
全ての材料を混ぜるだけです。
野菜を適当に切ったサラダにかけていただきます。
ドレッシングは、簡単な配合なのに、深い味わいがあり、酢の発酵による香りがして、すごく美味しいです!
グビグビ飲みたいと思うほど、軽くてさっぱりとしたドレッシングです。
自家製米酢を使って、こんなに美味しいドレッシングができるなら、これを使って、他にもいろいろ料理を作ってみようではありませんか。
酢のお湯割り
甘味を加えないで、酢をお湯で割っただけのシンプルな飲み物です。
こうやって飲んでみると、酸味だけでなく、香りや旨味も感じました。
酢をストレートで飲むと、酸っぱすぎて味を感じる余裕がありませんが、薄めるといろいろ感じられました。
酢のお湯割りは、酢の味を確認するには良いです。
しかし、決して美味しい飲み物ではなく、また飲みたいとは思いませんでした。
さて、次に寿司酢を作ります。
寿司酢の作り方
酢 100ml
砂糖 20g
塩 10g
酢に砂糖と塩を溶かせば完成です。
あったかご飯1合に、寿司酢大さじ2杯くらい混ぜると寿司飯になります。
納豆巻き。
寿司酢および寿司飯を使い、家にある食材で何か作ろうと思えば、これになりました。
美味しいのですが、酢をここまで加工したら、はっきり言って酢の味の良し悪しは、よく分からないです。
さて、次はマヨネーズを作ります。
マヨネーズは、卵黄によって油を乳化させたもので、そういった原理からすると酢は脇役ですが、酢が無ければマヨネーズの味が成立しません。
マヨネーズは、酢によって味が引き締まって美味しくなるのではないでしょうか。
という事で、酢の料理としてマヨネーズを紹介します。
マヨネーズを作る
卵黄 1個
サラダ油 120g
酢 12g
塩 小さじ1/2
砂糖 小さじ1/2
卵黄をボウルに入れます。
油を入れて混ぜます。
混ぜながら、油を少しずつ足していきます。
あれ、マヨネーズ化(乳化)してないぞ。
これは、ただ油と卵黄が混ざっているだけのドレッシング状態です。
混ぜ方が弱いのかもしれないので、マルチブレンダーでギュイーンと混ぜてみましたが、状況は変わらず。
湯煎で少し温めてみましたが、状況は変わらず。
マヨネーズ化(乳化)してません。
マヨネーズって初めて作りましたが、いや作れてませんが、簡単にできる物だと思ってました。
しかしこれは、マヨネーズではなく、マヨネーズの出来損ないか、良く言えば、卵黄ドレッシングか?
出来上がったマヨネーズを使ってポテトサラダを作るつもりだったので、もうすでにジャガイモを茹でてました。
このジャガイモ、どうしよう。
とりあえず、マヨネーズの出来損ないを使ってポテトサラダを作りました。
ポテトサラダとしては合格。
混ざっている調味料は同じですからね。
ハハハ…
ちなみに、ここまで調理すると、酢の味の良し悪しは、よく分かりません。
いや、もう酢の良し悪しはいいです。
それよりもマヨネーズを、ちゃんと作れるようにならないと気が済まなくなりました。
次は、マヨネーズ作りへの挑戦です。
続き マヨネーズを作る