北九州の郷土料理に、いわしのぬか味噌煮があります。
文字通り、いわしをぬか味噌で煮た料理です。
普通のぬかでなく、何と、ぬか床を使って煮るのです。
ぬか漬けの歴史について独り言
ぬか漬けの発祥ですが一般的には、江戸時代の始め、北九州小倉城藩主の細川忠興が、ぬか漬けを広めたと言われております。
だから小倉がぬか漬け発祥の地と言われております。
ところで、若狭地方・丹後半島では、へしこ(魚のぬか漬け)が鎌倉時代から作られていたという文献が残っているそうです。
その文献が何かは分かりませんが、きっと本当でしょう。
ですから、鎌倉時代の頃から野菜のぬか漬けも存在していたのだと思います。
きっとその頃は、お米の精白度合いも低かったでしょうから、ぬかも少量で、ぬか漬けが庶民の食べ物ではなかったかもしれません。
ぬか漬け発祥の地と言われる小倉で、ぬか漬けを広めた細川忠興は、小倉藩主になる前は、丹後の国の領主でした。
その後、関が原の戦いが終わって、1600年に行われた論功行賞で、丹後の国から豊前中津に国替え加増され、その後、中津城から小倉城に藩丁を移し小倉藩主となります。
要するに、簡単に言うと細川忠興は、丹後から小倉へ栄転したという事です。
その際に、丹後地方のへしこやぬか漬けの文化を小倉に持って行ったのではないでしょうか。
だから、ぬか漬け発祥の地を小倉と言うには、議論の余地がありそうです。
どうでもいい事ですが、歴史をほじくり返してみました。
(独り言終わり)
北九州ではぬか漬けの事を「床漬」と言う
細川忠興の後、国替えによって、小笠原忠真が小倉藩主になりました。
小笠原忠真もぬか漬けを好み、ぬか漬けの桶を大切に床の間に置いていたために、床漬と言われるようになったと言い伝えられています。
床の間に置いておけるくらいに清潔で香りが良かったのでしょう。
ぬか漬けは、きちんと手入れさえしてあれば、清潔で香りも良いのです。
さて、小倉の床漬けは、漬けた野菜を食べるだけでなく、ぬか床も調味料として使います。
その代表が、いわしのぬか味噌煮です。
玄界灘や、豊前海で獲れたいわしをぬか床でじっくりと柔らかくなるまで煮た料理です。
ぬか床の香りが魚の臭みを消して、骨まで食べられます。
サバやサンマのような他の青魚でも作れるみたいです。
以上のように、知ったような事を書きましたが、これらは全て、いわしのぬか味噌煮を作るに当たって調べた事です。
実は、つい最近になってこの料理の存在を知り、興味を持ち、作ってみたいと思い、調べたのです。
いわしのぬか味噌煮の作り方
いわし 6尾
醤油 60ml
酒 60ml
水 60ml
砂糖 45g
しょうが 10gくらい (千切りにしておく)
ぬか床 120g
新鮮ないわしを買ってきました。
キッチンバサミで頭を取り除き、腹を切り開き、内臓を洗い流しました。
こうすると魚の臭みが取れ、上品な味に仕上がります。
けど、ぬかと一緒に煮るのだから、臭みが残っていても大丈夫でしょう。
面倒ならこの工程は省略すればいいと思います。
ちなみに、この時点で煮汁をなめてみましたが、十分に美味しいです。
ぬかを入れなくても、これだけでいわしのショウガ煮として完成してしまいます。
しかし、それではいけません。
漬けはじめて10年くらいのぬか床です。
10年も漬けているのに、ぬか漬けについてあまりブログ記事を書いてません。
それはあまりにも日常生活の一部となっているために、ブログに書くなんて思いもよらなかったのです。
けど、今後はぬか漬けを見直して新たなネタを書いてみようかと思います。
家族は、この煮ている状況を見て、とんでもない物を見たという反応でした。
8歳の娘は、魔女がグツグツと薬を煮ているみたいと言い、臭いをかいで、ウワーっと倒れるフリをしました。
私の鼻には、ぬかといわしの匂いですから良い匂いとしか感じませんでしたが、人によって感じ方が違うみたいです。
これをまた弱火で加熱して沸騰したらごく弱火で10分くらい煮ます。
冷ましたり煮たりを繰り返す事によって、いわしの中まで味がしみ込み、骨まで柔らかくなります。
完成
いわしのぬか味噌煮。
では、いただきます。
パクッ。
モグモグ…
ん?
実に美味しいです!
ご飯が進みます。
ぬか床の酸味があるのですが、いわしの梅煮と同じような爽やかでバランスの良い酸味で美味しいです。
魚の臭みも全くありません。
骨まで柔らかいです。
ドロッとした煮汁にも魚の旨味が混ざり合って、それだけでもご飯が進みます。
ぬか床由来の旨味が凝縮されて、本当に美味しいです。
ぬか床が調味料として良く活かされている料理だと感じました。
まとめ
北九州の郷土料理である、いわしのぬか味噌煮を実際に作ってみました。
これが本当に美味しかった。
ちなみに、家族は食べようともしませんでした。
こんなに美味しい料理を食べようとしないなんてもったいない。
いや、もう食べさせてやりません。
私が独り占めしますから。
そんな訳で、ぬか漬けの新たな可能性を知り、ぬか漬けを見直しました。
ぬか床を調味料に使うなんて素晴らしい発想です。
日本の漬物発酵食文化の奥深さにまた感心してしまいました。