
4年間熟成させた魚醤
魚醤というのは魚と塩だけで1年間熟成させたら出来ます。
ただ、熟成後にそれを濾過するのはあまり気が進まない作業なので、1年経ってもそれを行わず、2年経ってもそれを行わず、結局4年放置してしまいました。
今回は、4年熟成させた魚醤がどんな物なのか分かる記事です。
魚醤の作り方については以下の記事をご覧ください。
【目次】
1.4年間熟成させた魚醤を観察
2.イワシを1匹取り出してみる
3.魚醤にする
3ー1.加水と火入れ
3ー2.濾過
4.2番搾り
5.1番搾りを再度濾過する
6.魚醤を味見する
7.魚醤の保存方法
8.2番搾りで魚醤ヌードルを作る
9.まとめ
10.動画で説明
4年間熟成させた魚醤を観察
これは、イワシを塩漬けにして4年間熟成させたものです。
材料はイワシと塩だけです。
仕込んだ時にメモを貼り付けました。
2021年4月19日
イワシ670g
塩167g
仕込んだ日と材料が書かれてます。
この分量は「イワシ:塩」が「4:1」になるように配合されたものです。
4年も経つと何を仕込んだのか分からなくなるので、こうやってメモを貼り付けておくといいですよ。
これは仕込んでから押し入れに入れて放置してました。
それで気がついたら4年も経ってしまいました。
画像を拡大しました。
色は、茶色くなりましたけど、魚が溶けずに原型がまだ残ってます。
まさか4年も熟成させて魚の形が残ってるなんて、溶けてるだろうと思ってたのですが、そうでもなかったです。
表面に焦茶色の薄い層がありますが、魚の油が浮いたものです。
魚の油が浮いて酸化したものです。
では蓋を開けてみましょう。
こんなになってます。
ピントが合ってないので分かりにくいですが、茶色い透明感のある液体にイワシが浸かってるような感じに見えます。
匂いは、普通です。
魚の干物みたいな匂いで、生臭みは全くないです。
イワシを1匹取り出してみる
瓶の外からは、魚の形が残っているように見えたので、もしかしたら、そのまま取り出せるかもしれないと思い、箸で1匹取り出してみます。
取り出したらこのようになりました。
尻尾の部分には身が残ってますが、それ以外は骨だけになっています。
尻尾の部分に残った身をそのまま少し食べてみます。
パクッ!
めちゃくちゃ濃厚な旨味が口に広がります。
魚醤の味そのものです。
魚醤の固形版とでも言いましょうか。
アンチョビの濃厚版とも言える味です。
この尻尾に残った身を集めたら濃厚なアンチョビとして使えるとは思いますが、面倒なので、このまま魚醤にしてしまいます。
魚醤にする
熟成したイワシは、以下の手順を経て魚醤にする事が出来ます。
①加水と火入れ
②濾過
③魚醤の完成
加水と火入れ
鍋に4年熟成イワシをぶちまけます。
加水して火にかけます。
入れた水は300ml程度です。
イワシが670gだったので、イワシの重さの半分程度の水を入れるといいです。
そうするとちょうど醤油と同じ程度の塩分濃度になります。
加水したくなければしなくても大丈夫です。
より濃厚な魚醤になります。
混ぜました。
混ぜると骨が沈んで見えなくなりました。
骨が見えてる間は少しグロさを感じましたが、骨が見えなくなるとグロさは無くなりました。
カプチーノそっくりじゃありませんか?
沸騰してきました。
あまりボコボコに沸騰させずに、フツフツと5分くらい沸騰させるといいです。
骨に付いてた身は完全に溶けました。
濾過
ボウルに、ザル、サラシを被せて、ここに注ぎます。
全部注ぎました。
どんどん濾過されていきます。
横から見るとこうなってます。
ポタポタと落ちてます。
さて、ほとんど濾過できました。
下には搾りたてのまだ熱い魚醤ができました。
そして、この搾りかすですが、まだまだ魚醤成分がたっぷり残っています。
このまま捨てるのはもったいないので、これで2番搾りを作ろうと思います。
2番搾り
鍋に搾りかすを入れます。
水を適当な量入れて火にかけました。
水の量はテキトーです。
2番搾りは1番搾りに比べ薄くなるので、魚醤としては使えません。
スープの素のような使い方ができます。
沸いてきました。
またこれを濾過します。
2番搾りができました。
これは魚醤としては使えません。
濃いスープの素みたいな感じで薄めてスープとして使えます。
1番搾りを再度濾過する
これは1番搾りの魚醤です。
表面に魚の油が浮いてるのが分かりますか?
ちょっと黒っぽいものが浮いてます。
これは酸化した油で、風味が悪くなるし、健康にも悪いですから、もう1回濾過して取り除きます。
1回目の濾過で油を完全に取り除く事もできます。
その場合は2回目の濾過は不要です。
また、1回目の濾過で油を完全に取り除く事ができなくても、2回目の濾過が面倒ならしなくてもいいです。
何か適当な容器にザルを乗せ、キッチンペーパーを敷いて、これで濾過します。
濾過が完了しました。
これで澄み切ったドス黒い魚醤ができました。
魚醤を味見する
完成した魚醤を少し舐めてみます。
すっごい旨味です。
そして、ほのかに甘みのようなものも感じます。
大豆でできた醤油とは旨味の質が違います。
この旨味は魚の干物の旨味に似てます。
美味しい魚醤になってます。
独特の匂いはありますが、これが魚醤の匂いで、不快ではありません。
比較のために市販の魚醤も舐めてみます。
原材料は「カタクチイワシ抽出物・食塩・砂糖」と、砂糖が入っています。
ちなみに手作りの魚醤の原材料は「イワシ・塩」です。
塩辛いです。
塩分濃度は市販品の方が高いですが、それだけではありません。
塩の角が立ってます。
手作りの魚醤は、塩の角が取れてまろやかな塩味になってます。
旨味については、市販品は、あっさりというか旨味は少ないです。
砂糖が入ってますが、甘味にはあまり差を感じません。
何故か搾菜(ザーサイ)のような香りを感じます。
当然ですが、手作りの方が圧倒的にウマイです。
魚醤の保存方法
完成した魚醤は、塩分濃度が16%以上ある計算になるので、基本的に腐りません。
しかし、長期間置いておくと、白いカビみたいな物体が液面に浮かびます。
それは産膜性酵母です。
産膜性酵母が発生したところで、毒ではありませんが、風味が悪くなるので、発生させたくありません。
冷蔵庫で保存すると、産膜性酵母の発生確率を下げる事はできますが、完全に防ぐことはできません。
産膜性酵母さえ防いだら、それ以外の菌にやられる事はあまりないでしょう。
だから、産膜性酵母対策さえできれば、魚醤を長期保存できます。

産膜性酵母は空気が必要です。
だから、保存容器に空気がほとんど入らないくらいに満タン入れて密閉すれば、常温で長期保存可能です。
しかし、少しづつ使いますから、使ったら魚醤が減ります。
減ると容器に空気が入るので、冷蔵庫で保存したほうがいいです。
また、産膜性酵母は空気に触れる液面でしか活動できません。
だから画像のような細長い容器に入れると液面の面積が小さいので、産膜性酵母のリスクを減らせます。
という訳で、使う分は、細長い容器に入れて冷蔵保存が望ましいです。
使わない分は、密閉瓶に満タン入れたら常温保存可能です。
2番搾りで魚醤ヌードルを作る
2番搾りを鍋に入れ水で薄め、ビーフンを茹でます。
具はちくわだけです。
冷蔵庫にある適当なものを入れただけの超手抜きです。
しかし、手作りの魚醤は美味しいので、たったこれだけで味が完成するのです。
その事を証明するためにわざと手抜きで作ってます。
青紫蘇を刻んで完成です。
青紫蘇でなくネギでもいいですが、と言うかネギの方がいいですが、冷蔵庫にネギが無かったので青紫蘇なのです。
ちゃんとした味になってます。
美味しいです。
普通は、スープを作る時は鶏がらスープなどのベースとなるスープに醤油などで味付けするものですが、手作り魚醤は違います。
手作り魚醤は、水で薄めるだけで、味が完成するのです。
だから、これだけシンプルな調理法でも美味しいのです。
もちろんいろんな具材を入れるともっとおいしくなります。
まとめ
- 4年も熟成させると魚は溶けてないようでも溶けてる。
- アンチョビよりも濃厚な旨味になった。
- 4年熟成させた魚醤はやはりウマイ。
- 市販品よりも圧倒的にウマイ。
- 保存には産膜性酵母の対策が必要。
- 冷蔵保存がベター。
- 魚醤と水だけで味が完成する。
動画で説明
動画では私が実演しています。
動画でしか表現できない事もあるので、併せてご覧ください。