京都の幻の漬物と言われる松ヶ崎漬けを実際に作ってみた
京都の伝統的な漬物で松ヶ崎漬けと呼ばれる漬物があります。
昔は松ヶ崎地域で作られていた漬物で、菜の花を乳酸発酵させて保存していました。
しかし、伝統的な製法で乳酸発酵させた松ヶ崎漬けは、現在ほとんど販売されておらず、幻の漬物とも言われています。
それを手作りしようとしましたが思わぬ苦戦を強いられました。
【目次】
1.松ヶ崎漬けとは
2.松ヶ崎漬けを買いに行く
3.松ヶ崎漬けを漬ける
4.菜の花漬けの懸念材料
5.漬けて2日後
6.さらに2日後(漬けてから4日後)
7.熱湯をかける
8.熱湯をかけてから3日経過
9.菜の花を漬ける時の注意点
10.松ヶ崎漬けやり直し
11.1日経過
12.さらに1日経過(合計2日経過)
13.さらに1日経過(合計3日経過)
14.乳酸発酵させる方法
15.さらに29日放置(漬け初めから32日経過)
16.自家製松ヶ崎漬けを試食
17.まとめ
18.動画で説明
松ヶ崎漬けとは
地下鉄の松ヶ崎駅があります。
今では松ヶ崎周辺は閑静な住宅街で、菜の花畑はほんの少しある程度です。
昔は松ヶ崎の一帯は、耕作地でした。
春は、菜種油を作るためにアブラナを育てて、アブラナの種を収穫した後にお米を育ててました。
そのアブラナの菜の花を間引きしたものをお漬物にして保存してました。
それぞれのお家の漬け方があって、お家によって漬け方が違ったみたいです。
基本的には菜の花を乳酸発酵させて漬けます。
漬け方は、糠に漬けたり、糠を使わずに漬けたりといろいろあったようです。
↑これは西利の「なの花漬」これはこれで美味しい。
今は、京都のお漬物屋さんで、菜の花のお漬物は売ってますけど、ほとんどが調味液に漬けただけの、乳酸発酵させてないものです。
伝統的な製法で、乳酸発酵させた松ヶ崎漬けというのはほとんど売ってません。
乳酸発酵させた本物の松ヶ崎漬けは、私がウェブで調べた限りですけど、唯一、京都の上鴨にある林慎太郎商店という漬物屋さんで売ってる事が分かりました。
◾️林慎太郎商店
https://hayashi-shintaro-syouten.com
他にも作ってる所はあると思うのですが、小規模だったり、Webで宣伝してなかったりで、情報にたどり着くのが難しいのです。
だから私が知り得た限りでは林慎太郎商店1件しか見つかりませんでした。
松ヶ崎漬けを買いに行く
そして、その林慎太郎商店に松ヶ崎漬けを買いに行こうと思ったのが4月11日の事です。
4月11日といえば、菜の花が咲き誇るシーズンですよ。
それで、お店に行く前にスマホで調べたら…
「今季分 めでたく完売となりました」
え!?
もう完売?
早っ!
「当店名物 幻と言われる松ヶ崎漬」と書いてありますよね。
やはり幻なんですね。
京都の名の知れたお漬物屋さんは添加物を使ってますが、この林慎太郎商店というお店は、調べたら無添加のお漬物ばかりを作ってるみたいです。
添加物を使った方が手間暇コストを抑える事ができますから、企業として添加物を使う事は否定しません。
そんな中でも林慎太郎商店は手間暇コストのかかる無添加の漬物を作ってるというから、ちょっと気になったので上賀茂にあるお店に行ってみました。
行ってわかりましたけど、ここでは基本的に店頭販売はしてないみたいです。
近隣のスーパーに卸してるのを買うか、ネットショップで買うのがスタンダードな買い方のようです。
けどお店でも、きゅうりの糠漬けならありますよって言われたので、きゅうりの糠づけを買ってきました。
きゅうりの糠漬けは家でも漬けてるから、これは美味しいけど、驚く程の味ではなかったです。
我が家の糠漬けも負けてません。
と言うわけで、松ヶ崎漬けを買う事ができなかったので、自分で作る事にします。
いや、買えたとしても、それを食べた上で自分で作るつもりでしたけどね。
松ヶ崎漬けを漬ける
松ヶ崎漬けは、お家によって漬け方が違ってたという事ですから、中村家の漬け方で漬けてみようと思います。
中村家の漬け方とは、要するに私の自己流という事です。
私がこれで良いと思う方法で漬けます。
菜の花を買ってきました。
これは滋賀県産です。
まずは、菜の花を水洗いし、ザルで水分を切っておきます。
漬物樽に菜の花を入れ、唐辛子を少々。
菜の花の2%の重さの塩を入れ混ぜます。
落とし蓋をして、重石を乗せ、蓋をしました。
菜の花漬けの懸念材料
実はここで、懸念材料がありました。
懸念材料というのは、菜の花は塩に強いのです。
2%くらいの塩では漬からないのではないかという懸念がありました。
その事について、以前実験を行いました。
実験について詳しくは以下の記事をご覧ください。
どんな実験かと簡単に説明すると
菜の花を3%の食水に1日浸けておくという実験です。
比較のために小松菜も同じように3%の塩水に浸けました。
要するに、菜の花と小松菜を3%の塩水に1日浸けました。
それで1日経ったら、小松菜の方は当然しんなりとしてお漬物みたいになりました。
そして菜の花は、3%の塩水に浸けても、しんなりするどころかシャキッとしました。
この実験から、菜の花は塩に強いということが分かりますよね。
だから、今回の菜の花漬けは2%の塩を振って重石をした訳ですから、ちゃんと漬かるかどうか心配になるでしょ。
漬けて2日後
蓋を開けて、様子を見てみます。
全然漬かってないぞ!!
また重石を乗せて少し体重をかけてみました。
体重をかけただけで漬かる事を期待して、また重石をして蓋をしました。
さらに2日後(漬けてから4日後)
さて、どうなってるでしょうか?
ん?
ちょっとピンボケやな。
うわ、漬かってない!!
漬かってないだけでなく、表面が少しヌルヌルしてます。
シャキッとしてるのにヌルヌルしてるのです。
これはやばいかも。
熱湯をかける
菜の花の漬物を作る時は、サッと1秒程度熱湯にくぐらせるか、熱湯をかけると良いです。
すると塩が染み込むようになります。
先ほど紹介した「菜の花の糠漬けの美味しい漬け方 腸内環境にも良いですよ」の記事でもそのように説明しています。
だから今更ながらですが、熱湯をかけます。
ザルに菜の花を入れ、そこに熱湯を浴びせます。
そして水で洗います。
洗った後の水の色、やばくないですか。
菜の花の表面のぬるぬるを洗い流したら水がこの色になりました。
そして水分を絞り、また樽に入れ、2%の塩をして混ぜ、重石を乗せ蓋を閉めました。
熱湯をかけてから3日経過
見た目にはちゃんと漬かってそうですが、水分が上がってないです。
それと、量が減って漬物樽では大きすぎるようになりました。
ガラスのボウルに移し替えます。
重石をして、さらに押さえて、水分が上がってくるまで押さえました。
この時点で少し摘み食いしました。
ちょと腐った味です。
ダメです。
このまま置きましたが、腐った味はより強くなる一方でした。
要するに、手間暇かけて、菜の花を腐らせてしまいました!
菜の花を漬ける時の注意点
ここまでお読みの方はもうお分かりだと思いますが、菜の花は、表面に塩に強いコーティングがあるから、普通に漬けても漬かりません。
菜の花の漬物を作る時は、サッと1秒程度熱湯にくぐらせるか、熱湯をかけると良いです。
すると塩が染み込むようになります。
私も分かってたのですが、なぜか普通に漬けて失敗してしまいました。
あと、塩もみして表面に傷を付けて漬ける方法もあるみたいです。
私は熱湯の方が慣れてるのでそうします。
松ヶ崎漬けやり直し
京都産の菜の花を買ってきました。
これをザルに入れて、熱湯をかけます。
そして、水で洗いますが、水は濁りません。
これが普通です。
水分を絞り、2%の塩と唐辛子を少し入れ混ぜます。
ジッパー付きの袋に入れます。
袋を押さえて、空気を抜いてジッパーを閉じます。
これを常温で置いておきます。
1日経過
また袋を押さえて空気を抜いてジッパーを閉じます。
汁がこぼれても大丈夫なようにバットに入れておきます。
さらに1日経過(合計2日経過)
また袋を押さえて空気を抜いてジッパーを閉じます。
さらに1日経過(合計3日経過)
また袋を押さえて空気を抜いてジッパーを閉じます。
これで空気がほとんど無くなったので、このまま放置しておきます。
乳酸発酵させる方法
ジッパー付きの袋で乳酸発酵させる場合は、袋を押さえて中の空気を抜いて、ジッパーを閉じます。
汁がこぼれても大丈夫なように、バットとかタッパーでも何でもいいから、とにかく汁がこぼれても大丈夫なように何か乗せて、それで常温で置いておきます。
そうすれば乳酸発酵してくれます。
漬物石を使うときは、これは腐った漬物の画像ですけど、汁が上まで上がるところまで漬けて、漬物本体が空気に触れないようにします。
乳酸菌は空気が無い環境を好みます。
また逆にカビなどの腐敗菌は空気が必要です。
だから、袋の空気を抜いたり、重石の場合は水分に沈めた状態にして空気に触れなくすると、乳酸発酵してくれます。
温度は常温です。
夏なら1〜2日で乳酸発酵が十分に進むでしょう。
冬なら1週間〜2週間かかります。
今回は菜の花漬けなので、基本的に春でしょう。
春と言っても温度に幅があるので、一概には言えませんが3日〜1週間くらいで程よく乳酸発酵が進むと思います。
さらに29日放置(漬け初めから32日経過)
このようになりました。
もう乳酸発酵してますから、この状態で、常温で半永久的に保存できます。
29日も放置しなくても食べたければ1週間程度で食べてもいいですよ。
自家製松ヶ崎漬けを試食
では32日漬けた自家製松ヶ崎漬けをいただきます。
美味いです。
酸味はあまり強くありませんでした。
唐辛子を入れてるから少しピリリとしました。
そして、発酵による何とも表現できない深い旨味があります。
まとめ
- 松ヶ崎漬けは京都の松ヶ崎地域で作られていた菜の花を乳酸発酵させた漬物。
- 今ではほとんど売ってない幻の漬物とも言われる。
- 菜の花は普通に漬けても漬からない。
- サッと1秒程度熱湯にくぐらせるか、熱湯をかけてから漬ける。
- ジッパー付きの袋で乳酸発酵させる場合、袋を押さえて中の空気を抜きジッパーを閉じて置いておけば乳酸発酵する。
- 漬物石を使う場合、汁が上まで上がるところまで漬けて、漬物本体が空気に触れないようにすると乳酸発酵する。
- 乳酸菌は空気が無い環境を好む、逆にカビなどの腐敗菌は空気が必要。
動画で説明
動画では私が出演して熱く語っています。
動画でしか伝わらない事もあるので、併せてご覧ください。