世界一のパエリアを求めて
2019/09/22
世界一のパエリアを求めて
ある世界中の料理に詳しい人から聞いた話です。
神戸三宮にあるカルメンというお店のパエリアが、めちゃくちゃ美味しい。
どのくらい美味しいかと言うと、世界一美味しい。
スペインの高級レストランで食べたパエリアよりも、神戸三宮にあるカルメンのパエリアの方が美味しいとの事です。
【目次】
1.神戸の食文化について
2.私のパエリアにかける熱意
3.という事で、神戸三宮にあるカルメンへ食べに来ました
3-1.ガスパチョ
3-2.フラメンカエッグ
3-3.タコとポテトのアリオリソース
3-4.カルメンのパエリア
3-5.ランチのパエリア
3-6.コーヒーとデザート
3-7.カルメンの店舗情報
4.カルメンのパエリアを食べて思った事
4-1.ラマーサの店舗情報
4-2.世界料理研究会でのパエリア研究
5.世界一のパエリアを作る
5-1.世界一のパエリア材料
5-2.スープを取る
5-3.トマト缶を煮詰める
5-4.2年半熟成させたいしるの固形分を加える
5-5.アサリを加える
5-6.具を炒める
5-7.煮込む
6.世界一のパエリア完成
7.まとめ
神戸の食文化について

聞くところによると、神戸の食文化というのは抜群の味覚センスと国際性があるというではありませんか。
まず、神戸の食材とは、瀬戸内海や、鳴門、明石海峡の魚介類。
野菜は、淡路島の玉ねぎや仙北の水ナス、また京野菜も手に入ります。
お肉は神戸牛という世界に冠たるブランド牛が存在します。
つまり、海の幸、山の幸を問わず何でも良い食材が手に入るという事です。
また、関西の富裕層が住むのが、芦屋や西宮、神戸の六甲山脈の麓です。
この人たちが金を惜しまずに美味しい物を求め食べに来るのが神戸です。
そこで生き残り、名店と謳われるお店は、それだけの美味しさがあるのです。
その昔、平の清盛が開いた大輪田泊(おおわだのとまり)から始まる世界との貿易窓口だったのが神戸です。
横浜や横須賀よりも600年も古い港町です。
そして、今から150年前まで皇族や貴族が住んでいた京都がすぐ近くで、奈良もすぐ近くなので、食文化がどこよりも発達するのは当然です。
日本一古く豊かで高いレベルの食文化を背景にし、国際性を加えた味覚センスがあるのが神戸の食文化なのです。
私のパエリアにかける熱意

私の得意料理は、パエリアです。
日々、より良いものを作るために、さらなる美味しいパエリアを求めて行脚しています。
いや、行脚はしてませんけど、さらに美味しいパエリアの作り方を求めて、アンテナを常に張り続けています。
そんな私が、世界一美味しいパエリアの話を聞いて、興味が沸かない訳ありません。
これは絶対に食べてみなければいけない。
世界一のパエリアから学ばなければ。
という事で、神戸三宮にあるカルメンへ食べに来ました
カルメンという店は、日本最古のスペイン料理屋で、創業は1956年、現在のオーナーは2代目だそうです。
店内の写真は撮ってませんが、年季の入った家具やインテリアで、異国情緒が醸し出されています。
家族4人で行きました。
子供たちは一人千円ちょっとのランチのセットを注文しましたが、私と妻は、ランチに付いているパエリアではなく、ちゃんと単品で2人分3000円のパエリアを注文しました。
ランチと単品では値段設定が違いますから、単品のパエリアなら、お店の人も気合を入れて作ってくれるでしょう。
単品のパエリアに、一人1200円追加してスープやデザートが付いてくるセットにしました。
2人前で5400円です。
ガスパチョ

ガスパチョ。
野菜の冷製スープです。
実にウマいです。
ちゃんと野菜をミキサーで潰してバランス良く作られています。
フラメンカエッグ

フラメンカエッグ。
子供たちが注文したランチに付いてくるメニューです。
お皿に固形燃料を仕込んであって、テーブルに運んでから点火してくれます。
そして、火が消えてからいただきます。
私は食べてないので味はわかりませんが、半熟卵にトマトベースの味が付いているみたいで、美味しいとの事です。
タコとポテトのアリオリソース

タコとポテトのアリオリソース。
アリオリソースとは、ニンニクとオリーブオイルで作ったマヨネーズみたいなソースです。
マヨネーズの起源とも言われています。
ポテトが大半で、タコの存在がわからないくらい少し混ざっています。
それをアリオリソースで絡めてあります。
簡単に言えば、ポテサラです。
味は美味しいですが、ポテサラですから、驚くほどの美味しさではありません。
カルメンのパエリア

とうとう出てきました。
カルメンのパエリア(3000円 2人前)です。
手長エビ、ムール貝、アサリ、イカ、鶏肉、そのどれもが美味しく調理されていて綺麗に盛り付けてあります。
サフランライスには魚介の旨味が、これでもかというほど濃縮されて浸み込んでいて美味しいです。
また、長年使い込んでいるパエリア鍋にも魚介の味が浸み込んでいるのでしょう。
鍋からも美味しさが染み出してくる感じです。
めちゃくちゃ美味しいです。
美味しいのですが、ただ、残念なのは、パエリア鍋で炊いていない事です。
おそらく、サフランライスと具材は別々に調理されていて、それをパエリア鍋に盛り付けて、オーブンでちょっと温めて出しています。
だから鍋底のおこげもありません。
熱々でもありませんでした。
ランチのパエリア

ランチのパエリアです。
これで2人前です。
メニューにはサフランライスと書かれていましたが、パエリアですね。
単品のパエリアに比べて量が少ないのと、手長エビが無かったり、ムール貝などの具が少なくなっています。
味は同じで、違いはボリュームだけでした。
コーヒーとデザート
画像はありませんが、コーヒーとデザートも手作りで美味しかったです。
カルメンの店舗情報
◆スペイン料理カルメン
住所:〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通1丁目7−1
営業時間:11時30分~22時30分(L.O 21時)
電話番号:078-331-2228
定休日:月曜(祝日の場合翌日休)
カルメンのパエリアを食べて思った事
正直言いますと、これで世界一か?という感じでした。
料理全体のレベルは高かったので、お店としての評価は高いです。
カルメンの料理は、とても美味しいです。
さすが、神戸で長年愛され続けているだけの事はあります。
ですが、パエリアが世界一かと言うと、そうは思いませんでした。
京都にあるラマーサというお店のパエリアの方がはるかに美味しいです。
ラマーサのオーナーは、スペインで修行をして、本場でパエリアの技術を身に付けました。
また、オーナーの実家は寿司屋で、寿司屋の味覚とセンスと新鮮な魚介の仕入れルートを活かし、スペインの技術と融合させ、新鮮な魚介類を使った、繊細で美味しいパエリアを誕生させました。
私がパエリアを好きになったキッカケは、ラマーサのパエリアを食べたからです。
それまでは、パエリアという料理は、日本人の口に合わないマズい料理だ、という認識だったのです。
実際に満足のいくパエリアを出してくれるお店は皆無です。
ところが、ラマーサで、そんな認識が一気にひっくり返されたのです。
そこから私の主催する世界料理研究会でパエリア研究が始まり、ラマーサに追いつけ追い越せで研鑽してきたのです。
パエリアを極めてみたい方は、ラマーサで学びましょう。
ラマーサの店舗情報
◆スペイン海鮮料理 ラマーサ
住所:京都市中京区亀屋町380(御幸町通・御池上ル)
営業時間:ランチ:12:00 - 14:00 (L.O.)
ディナー:18:00 - 22:00 (L.O.)
電話番号:075-255-6093
定休日:店舗にお問い合わせください
ウェブサイト:http://www.lamasa.jp/
世界料理研究会でのパエリア研究
また、私の主催する世界料理研究会でのパエリア研究もご覧ください。
世界一のパエリアを作る
今までのノウハウを駆使して世界一のパエリアを自分で作ってみましょう。
世界一のパエリアを作るなら伊勢えびとか入れたら良いでしょうけど、近所のスーパーで買い物したので、普通の食材しか手に入りませんでした。
料理の味は素材で決まりますから、普通の食材で世界一の味を出せるのでしょうか?
いや、秘蔵の調味料を使うから大丈夫です。
世界一のパエリア材料
【スープの材料】
スープ 400ml(詳しくは後述します)
トマト缶 1/2缶
いしるの固形分 大さじ1(詳しくは後述します)
サフラン0.1gくらい
アサリ 200gくらい
【メインの材料】
お米 2合
ニンニク 1かけ(みじん切りにする)
スルメイカ 2はい(適当な大きさに切る)
エビ 200gくらい(殻をむいておく)
たまねぎ 1/2個(適当に切っておく)
ピーマン 3個くらい(適当に切っておく)
炒め用オリーブオイル 大さじ2くらい
白ワイン 大さじ2くらい
塩 少々
コショウ 少々
まずパエリアスープを仕込んでおき、それから具材を炒めてパエリアスープと一緒に煮込むという方法で作ります。
スープを取る

鶏の皮、エビの殻、イカの内臓でスープを取ります。
鶏の皮は、別の料理で使った鶏肉の皮をスープ用に冷凍しておいたものです。
エビの殻は、具のエビの殻です。エビの殻からも美味しいスープが取れます。
捨てるのはもったいないですよ。
イカの内臓は、もちろん具のイカの内臓です。
イカの内臓にはクセがありますが、パエリアにしてみるとそのクセも旨味に感じます。
内臓に抵抗がある方は、黄色っぽい部分と黒っぽい部分は捨てて、残りの白っぽい部分だけ使ってもいいです。
手軽に粉末のスープを使うことをお勧めする場合が多いですが、今回はちゃんとスープを取ります。
化学調味料に頼らずにしっかりスープを取ると、当然ですが、味の品質がグレードアップします。
トマト缶を煮詰める

トマト缶を煮詰めてトマトソースを作ります。
トマトにはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などの旨味成分が豊富に含まれていて、料理にトマトを混ぜると旨味が足されて美味しくなるのです。
洋食にはトマトで味付けをする料理が多いのはそのためです。
グルタミン酸は、主に昆布だしに含まれる旨味成分です。
イノシン酸は、主にカツオだしに含まれる旨味成分です。
グアニル酸は、主に干ししいたけの戻し汁に含まれる旨味成分です。
トマトにはこの3つの旨味成分が含まれているので、トマトを足すだけで幅広い味になるのです。
美味しいパエリアを作るには、トマトを入れる事は必須です。
手軽にケチャップを使ってもいいですが、トマト缶を煮詰めた方が、断然味のグレードがアップします。
このトマトソースに先ほどのスープとサフランを加えます。
2年半熟成させたいしるの固形分を加える

スープとトマトソースを混ぜ、サフランを入れ、秘蔵の調味料である2年半熟成させたいしるの固形分を大さじ1加えます。
世界一を目指すなら、これくらい強烈な調味料を入れてみてもいいんじゃないでしょうか。
いしるの固形分について詳しくはこちらをご覧ください。
アサリを加える

さらに、スープにアサリを加えます。
もう十分に美味しいスープに、さらにアサリを加えて、美味しさの爆発寸前というスープに仕上げました。
ちょっと、いしるの香りが気になりますが、パエリアとして完成したら味も馴染むでしょう。
これでスープの仕込みは完成です。
具を炒める

私は、パエリア鍋でなく、スキレットで作ります。
スキレットは、分厚い鉄のフライパンなのですが、分厚い鉄のその蓄熱で、ふっくらと美味しく炊けるのです。
いろんな鍋でパエリアを作った結果、スキレットで作るのが一番美味しいと感じています。
パエリア鍋も、分厚い鉄で出来たパエリア鍋も売ってますから、それで作っても同じように美味しく出来るでしょう。
私は、スキレットの方が用途が幅広いので、気に入ってそれを使っています。
プロゴルファー猿がドライバー1本でゴルフをするように、私はスキレット1本で何でも作るのです。

スキレットを温め、オリーブオイル、ニンニクを加えます。

イカとエビを加え炒めます。

玉ねぎとピーマンを入れ、塩とコショウを加え、火が通ってきたら白ワインを加えます。

洗って水を切ったお米を入れ、炒めます。
煮込む

パエリアスープを加え、全体を混ぜます。

蓋をして弱火にして10分煮込みます。

10分後、蓋を取ると、まだ水分が残ってベチャっとした感じです。
中火にして水分を飛ばします。

水分が飛んで、グツグツという音がチリチリという音に変ってきます。
匂いを嗅ぐとスープを煮詰めている匂いから、香ばしい匂いに変化してきます。
目で、水分が飛んだ事を確認して
耳で、音がグツグツからチリチリに変った事を確認して
鼻で、スープを煮詰めている匂いから、香ばしい匂いに変化した事を確認します。
このタイミングで火を止めると、底は香ばしいおこげが出来、中はふっくらの最高の炊き具合になります。
パエリアを上手に作るには、最後の火を止めるタイミングが肝心なのです。
この最高のタイミングは、目と耳と鼻の3点で判断しましょう。
この3点を確認できたら火を止めて蓋をして10分蒸らします。
10分蒸らせば食べられます。
世界一のパエリア完成
完成したパエリアは、きれいな画像が撮れなかったので、画像なしです。
味は、色々な旨味がギュッと詰まった贅沢な味で、適度に香ばしいオコゲも付き、ふっくらと炊けてました。
そして
美味しいのですが、
いしるの味がちょっと強いです。
これはちょっと…
世界一個性的な味!?
ある意味世界一のパエリアでした。
まとめ
- 日本一古く豊かで高いレベルの食文化を背景にし、国際性を加えた味覚センスがあるのが神戸の食文化。
- 神戸三宮にあるカルメンのパエリアよりも、京都にあるラマーサのパエリアの方が美味しい。
- 世界一のパエリアを作ると息巻いて作ったものは、世界一個性的なパエリアでした。
まだまだ、世界にはもっと凄いものがあるはずです。
より良いものを求めて研鑽を続けますので、よろしくお願いします。